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「妻とはずっと二人三脚」山瀬功治が振り返る25年のサッカー人生と妻・理恵子さん「仮に明日死んだとしても、全力で生きてきたよね」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/04/11 17:02

25年にわたるプロ生活に終止符を打つ決断をした山瀬功治(43歳)が、激動のサッカー人生を明かした
契約満了となっても逆にいろんなクラブ、いろんな地域を渡り歩くことをプラスに受け止めた。そこに新しい出会いが待っていると考えるようになった。
妻も一緒になって馴染みのない土地に飛び込んだ。京都、福岡、愛媛、山口でも地元メディアに定期的に登場するなど夫以上に“愛されキャラ”となった。山瀬がチームに溶け込んでいくのと同様に、妻も地域に根を張ってきた。
「僕の仕事のあおりを受けるわけですから、やってきた仕事を一度リセットしなきゃならず、申し訳なく思っているところもあるんです。それでも妻は“新しい環境も楽しみ”だと言ってくれました」
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妻からリスペクトされ、妻をリスペクトした。どこに行こうとも、どんな決断をしようといつも自分の傍らにいてくれた。この人のためにも頑張らなければならないという思いが心から湧き立った。
衝突して“取っ組み合い”になったことも…
夫婦であり、同志であり。本音と本気でストレートにぶつかり合い、若いころは意見の衝突がエスカレートして“取っ組み合い”みたいになったこともあったとか。
山瀬は言う。
「何か(思ったことを)腹にため込んだまま一緒にいるのって、やっぱり嫌じゃないですか。僕も妻も、思ったこと、感じたことは基本的にすべて話しておきたいタイプで、その過程でそんなふうになったこともありました。今はもうないですよ(笑)。でもすべてオープンにしてきたからこそ、サポートしやすかったみたいではあります。今こういう状況だって、大体分かりますから。だからお互いメチャメチャ喋ります。そういう関係でいたからこそ、逆にいろんなことに対してどうしようかっていう形も共有できたのかなって思いますね」
引退を決めたときも、かしこまって伝えたわけではない。
リミットに設定していた1月31日が過ぎたことで「終わりかな」「そうだね」の短い会話で十分だった。
寂しさは募るも、その気持ちに引っ張られることもないのは妻の言葉があったからにほかならない。
「プロで25年もやってきましたから、やっぱり終わりなんだっていう思いはありました。妻に電話でそんな話をしていたら、『20代で辞めざるを得ない選手がたくさんいるなかで、あなたは25年間も現役を続けてこられたんだから、寂しいとか何だとか言ったら、もっとサッカーをやりたかった人たちから怒られちゃうよ』と。寂しさはありましたけど、まあ、おっしゃるとおりだとも思いましたね(笑)」
一つの挑戦の終わりは、次の挑戦の始まり。
とどまるのではなく、ウエットになるのではなく、やり切ったのだから後ろを振り返ることなく次に進んでいこうという彼女らしいエールにも聞こえた。現役引退後もサッカーにかかわっていく人生に変わりはない。
「サポーターであり、マネージャーであり、人生の師匠」
2月27日に最後の所属クラブ、レノファ山口を通じて現役引退を発表したリリースには、妻にも言及している。