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甲子園の風BACK NUMBER
「スカウト泣かせでした」某球団スカウト、声のトーンは低く…ドラフト候補“不作”な中でのホンネ評価「でもエナジックは野球界に風穴を」
text by

間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2025/04/06 11:02

プロスカウトにとって収穫が少なかった今センバツ。しかしエナジックスポーツ高等学院の戦いぶりには感銘を受けたという
「甲子園に出場する高校には打撃マシンが複数台ありますし、ウエイトトレーニングの環境が整っているところも多いです。タイミングの取りやすいフォームの投手、特に右投手であれば、打者は140キロを超える球にも対応する力があります。一方、石戸投手は打者が練習できない投球をします。球速が130キロに届かなくても、打撃マシンの130キロとは球質が全く違うわけです。投手は球速や奪三振数が話題になりがちですが、投手に最も大切なのは失点を防ぐことです。強豪校の打者を抑える石戸投手の姿は、全国の球児に参考にすべき点があると思います」
エナジックの「ノーサイン野球」に感銘を受けたワケ
また、創部3年目でセンバツ出場を果たして勝利も挙げたエナジックスポーツにも、新しい価値観や可能性を感じたという。
監督が一切サインを出さない「ノーサイン野球」は、高校野球の常識を覆した。選手たちがアイコンタクトで犠打やエンドランを決め、積極的な走塁で球場を沸かせた。スカウトが語る。
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「野球を含めてスポーツは技術向上に加えて、考える力を育てる目的があります。野球を通じてチームメートや対戦相手が何を考えているのか想像する力は、社会に出てから必ず生きます。暴走と言える走塁はありましたが、エナジックスポーツの野球は他の競技と比べて監督が選手を動かす要素が強い野球界に風穴を開けるきっかけになるかもしれません。プロを目指す上でも、思考力や想像力は重要です。長年プロで活躍している選手は身体能力や技術だけではなく、考える力も優れています」
ドラフト候補の逸材は例年以上に少なかった
高校野球ファンとしては、見どころの多い大会だった。だが、「スカウト泣かせ」と総括したのは、ドラフト候補となる逸材が例年以上に少なかったからだ。〈つづく〉

