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「お前の父ちゃんは何やってんだ」痛烈ヤジを浴びた宮崎で…工藤公康の娘・工藤遥加32歳が“涙の初優勝”「プロゴルファーになった娘を信じた家族の絆」 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/04/03 06:02

「お前の父ちゃんは何やってんだ」痛烈ヤジを浴びた宮崎で…工藤公康の娘・工藤遥加32歳が“涙の初優勝”「プロゴルファーになった娘を信じた家族の絆」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

2010年、日本女子オープンに出場した当時高校生の工藤遥加を見守る父・公康

 見まいと決めていた順位表は、終盤16番のグリーン上で目に入ってしまったという。裏街道から猛チャージをかけてきたツアー11勝の名手・小祝さくらが1打差に迫っているのが分かり「え、スゴっ」と驚いたのも一瞬。「ここからは落とせない。18番(パー5)で獲ればいい話」と気持ちを強く持ったまま、狙い通り最終ホールのバーディで逃げ切った。

「はじめのうちは自分(目当て)のギャラリーではなかった方たちが、最終的に『頑張れ、頑張れ』と応援してくれて、背中を押された」。あの日、ロープサイドで響いた父へのヤジは、自分への声援に変わっていた。

 昨シーズン、30代で優勝した選手は同じ1992年生まれのイ・ミニョンだけだった。日本人選手に絞ると23年に2勝した同期の青木瀬令奈以来。工藤は「自分はこのまま勝てないのかな」と感じる時期も、トップ選手が毎年若返ろうとも「頑張っている人が勝つんだろうなって。年齢ではないのかなって」と可能性にかけた。

偉大な父、活躍する兄との時間

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 今もコーチとして頼る父は野球評論家として活躍する傍ら、富士山に南アルプス、八ヶ岳を望む場所でバーベキューをするのが好きだという。「お肉や土地のお野菜を焼いてもらったりして食べるのが家族の時間」。初優勝の前には母・雅子さんから、かつて監督退任直後だった父が「遥加を勝たせたい」と記した紙を見せられ、兄の阿須加さんとは一緒に食事をした。「最近はお兄ちゃんの(ドラマ、映画出演作)『ゴールデンカムイ』を見るのが楽しみなんです」

 長らく望んだ結果が出なかった長女を、一時でも「ふがいない」と感じた人が工藤家にはいただろうか。

「まず来週の試合に出られるようになったことがうれしい」と優勝でつかんだ年間の出場権を喜ぶ。父が現役、監督時代にキャンプで何度となく訪れた宮崎は、日本のゴルフシーンにとっても欠くことができない場所だ。同じようにゴルファーの合宿地に選ばれるのはもちろん、男女のプロゴルフ大会を開催。女子ツアーは毎年、シーズンの上位者だけが進める最終戦JLPGAツアーチャンピオンシップ・リコーカップが宮崎空港そばの宮崎カントリークラブで行われる。

「このオフも宮崎で練習していたんです。でも、宮崎カントリー(通称ミヤカン)は回ったことがなくて。『ミヤカンに行ってプレーしてみたい』と思っていたけれど、『いや、まだリコー(最終戦)に出られないのに、ウロチョロするのもなあ』って……」

 恥ずべきことは、もうないはずだ。

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