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<プロゴルファー7年目の決意> 有村智恵 「自分のためにアメリカへ」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/11/08 06:02
主戦場を移してきた。そのなかで日本ツアーにこだわり続けた看板プロが
ついに渡米を口にした。揺らぎ続けた思いの裏側にあったものとは。
宮里藍は後輩の心の中にあるためらいに気づいていた。コースで会った時に米ツアーについて聞かれることはあっても、その後輩は「日本でまだやり残していることがあるんです」と話していたからだ。
「そうやって迷っている分にはまだ来ないな」
それが宮里の印象だった。同じく米ツアーで戦う上田桃子も、宮里藍や宮里美香と「いつこっちに来るんだろう。でもまだ絶対に来ないね」とささやき合っていたのだという。
宮里藍は幼い頃の夢を叶えるため、上田桃子は世界一のプレーヤーになるため、宮里美香は競い合ってきたライバルに追いつくために。彼女たちにはそれぞれ海を渡らなければならない理由があった。
そして、迷っていた後輩、有村智恵にもついに理由ができた。スポット参戦した昨年の米ツアーで2位になった時でさえ逡巡していたのが、いよいよ来季からの米ツアー本格参戦を目指すことにしたのである。
“メジャーでも勝てる”自信を持つため、米ツアーに行くしかない。
「アメリカに行くたびに、この環境で練習をするのと日本で練習するのでは上達具合が全然違うなと感じてました。アメリカなら丸一日練習していても飽きることがない。日本のコースや練習場ではどうしてもできない練習がたくさんあるんです。そういうところでどんどん差がつくんだろうなと思いました。
メジャーに出たときには、英語が話せないこととかモヤモヤしていた部分もあって、胸を張って試合に出られていない自分がイヤでした。とにかく自信を持って、メジャーでも“勝てる”と思って臨めるようになりたい。そのためには米ツアーに行くしかない。それが素直な気持ちですね」
理想のゴルフ、理想の自分を追求したい。誰のためでもなく、自分のために海を渡る。大きな決断の理由そのものが、有村のゴルフに臨む姿勢の変化を物語っていた。
今シーズンが始まる前は、理想など掲げていられない状況にあった。昨季途中に痛めた手首の回復を待つために開幕からの3試合を欠場。体への負担を考慮して今季は海外遠征も封印することにした。この先も無事にゴルフを続けていけるのか。そんなことを心配せざるを得なかった。