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「お前の父ちゃんは何やってんだ」痛烈ヤジを浴びた宮崎で…工藤公康の娘・工藤遥加32歳が“涙の初優勝”「プロゴルファーになった娘を信じた家族の絆」
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桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph bySankei Shimbun
posted2025/04/03 06:02

2010年、日本女子オープンに出場した当時高校生の工藤遥加を見守る父・公康
父は投手としては必ずしも大きくなかった身体を目いっぱい使い、ボールのキレと大きなカーブ、そして頭脳で勝負したサウスポーだったが、娘は170cmを超える恵まれた体格を活かしたロングドライブが武器。その年の冬、工藤はプロテストに合格した新人選手による大会(LPGA新人戦)で見事、優勝。カップを掲げた12月9日はまさに、父が自身のブログで現役引退を発表した日だった。
「お父さんの顔に泥を塗っている」
プロアスリートとして「雲の上の人」と仰ぎ見る父からバトンを受けた――という、美しすぎるストーリーのようで、工藤は当時、世間の反応と自分の力とのギャップを感じていた。プロ入り直後にツアーに初めて出場した2011年8月のニトリレディスでは、2日間通算11オーバー102位であえなく予選落ち。
「めちゃくちゃ打って予選落ちしたけれど、『自分的にはもっとできたかな』とも全く思わなくて。『こんなもんだな』って。自分が上手くないのは超、自覚していたので、“申し訳ないな”という気持ちでした」
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堀奈津佳、青木瀬令奈、香妻琴乃といった同期の選手たちが初優勝を飾っていく一方で、翌シーズンのシード権にすら手が届かないまま、工藤の時間は過ぎた。忸怩たる思いは、誰よりも父に向けたものだった。
まっとうに力を尽くしている自分の子どもを、情けなく思う親などいないはずだが、「本当にふがいない娘で申し訳ない」「お父さんの顔に泥を塗っている」と自らを恥じ入るばかりだった。