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「お前の父ちゃんは何やってんだ」痛烈ヤジを浴びた宮崎で…工藤公康の娘・工藤遥加32歳が“涙の初優勝”「プロゴルファーになった娘を信じた家族の絆」
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桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph bySankei Shimbun
posted2025/04/03 06:02

2010年、日本女子オープンに出場した当時高校生の工藤遥加を見守る父・公康
タレントの若年化が進む女子ツアー。工藤の転機は30歳で迎えたシーズンオフにあった。YouTubeなどを通じてソフトボールの二刀流選手で東京五輪金メダリスト、藤田倭の姿に目を奪われ、インスタグラムで「食事に行きたいです!」とダイレクトメッセージを送った。
願いはかない、あれよあれよという間に数カ月後の2023年2月に藤田が所属するビックカメラ高崎ビークイーンの合宿に参加することに。「藤田さんもお父さんのことを応援してくれていたみたいで……」と実現の経緯を少々バツが悪そうに明かすが、沖縄での2週間の集団生活はあまりに刺激的だった。
自分が選んだ道に誇りを持ち、懸命に汗を流す選手たちの姿にハッとした。藤田から聞いた「失敗することがカッコ悪いんじゃない。チャレンジしないことがカッコ悪い」という言葉にも胸をえぐられた。
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その年の5月、工藤は下部ツアー、いわゆる二軍ツアーで初優勝を飾った。レギュラーツアーではシード獲得の基準であるポイントランク(メルセデス・ランキング)を前年の91位から67位に押し上げ、昨年は61位とボーダーラインの50位に近づいた。
大混戦を抜け出すスーパーショット
そして迎えた今年の宮崎でのシーズン第3戦。最終日はスタート前に首位と3打差以内に14人、4打差以内に28人がひしめく大混戦。1打差の3位から出た工藤は前半4番のスーパーショットで加速した。
フェアウェイバンカーから残り125ヤードの2打目をピッチングウェッジでピンそば30センチにつけてバーディ。続く5番も9番アイアンでのセカンドショットを1メートルにピタリと合わせてさらにスコアを伸ばした。
すぐ後ろの最終組には、こちらも初優勝が期待された19歳の菅楓華がいた。「『ナイス、ナイス』という声がすごく聞こえてきて、『いくつ伸ばしているんだろう』と思いながら、自分は自分にできることに集中した」と32歳。緊張感をふくらませるリーダーボードに並ぶ選手の名前には目もくれず、トップの数字だけを追いかけた。