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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「ずっと同じではいられない」W杯で自身初の表彰台ナシ…28歳の高梨沙羅が語る“雌伏のシーズン” 悩むベテランゆえの難しさ「客観的だからこそ…」
text by

折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/04/04 11:01
今季、自身初となる「表彰台ゼロ」でシーズンを終えた高梨沙羅。来年に迫ったミラノ五輪に向けて本人が語った“現在地”とは?
――それはご自身の真面目さゆえ……という感じですか。
高梨 どうですかね……。やっぱり早くいい状態に持って行きたいという気持ちがあるから、「あれも、これも」と欲張ってしまう。「欲張ってしまうから、逆にひとつもできないのかな」という思いもあるけど、明らかに直さなきゃいけない部分が目に見えていたら直さないで後悔するよりは直してみて……という。そこにアプローチをかけて失敗したとしても、自分のものになることがあるとは思うので、何もしないよりは手をつけたくなってしまうんです。
――世界選手権では最後のラージヒルでやっと雨も上がって助走路もきれいになり、体の小さい高梨選手も滑りやすくなって、神様も微笑んでくれたのかなと思いましたが。
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高梨 微笑んでくれましたか(笑)? 条件はかなり悪い中でのジャンプだったし、9.9点も引かれるような向かい風だったとは思わなかったんですけど、K点超えの124.5mで今回のラージヒルの中では一番いいジャンプが飛べたとは思います。内容としての締めくくりはできたかなと思います。
――結局1本目だけで試合は終わりましたが、横川朝治コーチは「2本目があれば日本勢は全員順位を上げるだろうなと思っていた」と話していました。残念な気持ちもありますか。
高梨 そこはタラレバの話でしかないですけど、2本目を飛びたかったという気持ちはすごく大きかったですね。でも、あのまま試合をやっていればケガをする選手が出たかもしれない、というくらいの風の状態だったので。
ケガをする選手がいなかったのはよかったなと思いながら、「でも、もう一本飛びたかったな」というのがシンプルな自分の気持ちです。少し不完全燃焼で終わってしまったなという感じでしょうか。
ジャンプ競技で「長く活躍する難しさ」
――世界を見れば、突然ポンと出てきてW杯などで活躍しても、直ぐに調子を落としてしまう選手やケガで低迷する選手もいます。横川コーチは、「そんな中でずっと上位を保っている高梨選手や伊藤有希選手(土屋ホーム)は化け物だ」ともいっています。
高梨 スキージャンプってそういう競技なんだとは思いますね。なので2シーズンずっと好調なニカ・プレブツ選手(スロベニア)はやっぱり実力を持っていると思います。しっかり自分のジャンプを築き上げて、保っていられるのは彼女の能力。そういう選手と比べると、「上位を保っている」と言われても、今の位置では全然ですからね。やっぱりポンと出てもきっかけをつかむことができると、そこからなぜか分からないけどジャンプの調子も上がっていく。10位前後にいる今は、なにかのキッカケをつかむことができるための準備だと思うようにしています。

