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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「ナガトモは批判された11年後も日本代表に」バーレーン戦ホンネ採点…日本通ブラジル人記者が称える長友佑都38歳の存在「今は全員、W杯優勝を」
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/03/24 06:03

前半は苦しみながらも2-0で勝利したバーレーン戦。ブラジル人記者がホンネで採点した
「新しい選手を試したいが、W杯で有利な組み合わせとなるためにFIFAランキングをできるだけ上げておきたいから、勝ち点も積み上げたい。過去に日本代表がこのような状況に置かれたことはなく、初のチャレンジとなる。なかなか難しいミッションだ」
――今後、試すべきだと思う選手は?
「デンマークリーグで得点を量産している23歳の鈴木唯人、中盤で攻守に渡って貢献する21歳の松木玖生、パリ五輪に出場した23歳の藤田譲瑠チマらだね」
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――ドイツのブンデスリーガで好調のMF佐野海舟はどうでしょうか?
「マインツで素晴らしいプレーを続けており、能力的には招集されてしかるべき選手だと思う。ただ、例のスキャンダル(※2024年7月に女性への不同意性交の疑いで逮捕されたが、8月に不起訴処分となった)の問題があり、森保監督の中で招集したい意向があっても結果的に見送っているのではないか。しばらくは招集されないと予想している」
「W杯優勝」の目標は素晴らしいことだ
――今後、W杯までに日本代表が克服すべき点は?
「アジア予選では日本が攻撃的にプレーしたこともあり、守備陣を試されることが少なかった。今後は欧州、中南米などの強豪国と可能な限り強化試合を組み、守備面の課題を見つけて強化につなげたい。アジアモードから世界モードへの切り替えが必要で、強豪国相手にはウイングバックにより守備的な選手を起用することも考えられる。
攻撃面では、強力なストライカーを手に入れたい。現時点でレギュラーの上田にはフェイエノールトでもっと出場してもっと点を取ってほしい。小川、中村、鈴木ら他のアタッカーの成長にも期待したい」
――現在のチームは、監督も選手も「W杯では優勝を目指す」と公言しています。これについてどう思いますか?
「素晴らしいことだと思う。2026年のW杯で優勝できるかどうかはわからないが、日本サッカー協会が公に2050年までの優勝を目標に掲げている以上、今からそれを目指さないと間に合わない」
2014年はナガトモとホンダだけだったが…
――日本人選手で最初に「W杯優勝を目指す」と言い出したのは本田圭佑で、2014年W杯前のことでした。長友佑都も賛同した。しかし、当時の日本は2度のベスト16(02年、10年)が最高成績。2014年大会では1勝もできずグループステージを最下位で敗退し(※1分2敗)、本田と長友は厳しい批判を受けた。
「当時の日本にとって、W杯優勝なんて夢のまた夢だったからね。でも、堂安は『あの本田さんの言葉を聞いて、大きな刺激を受けた』。そして、長友は『達成したいという情熱がないと、夢は叶わない。あの言葉が夢見る少年たちに響いていたのであれば、大きな意味があった』と語っている」
――その長友は11年後、38歳となった今も代表に招集され続け、同じことを言い続けています。
「2014年はW杯優勝を唱えたのが本田と長友だけだったけれど、現在はチームの全員がこの目標を共有している。ここが大きな違いだね。
私がジーコにインタビューした際、彼は、『アマチュアリーグ(日本サッカーリーグ=JSL)で2部だった住友金属が鹿島アントラーズとして1993年のJリーグ創設に参加したとき、私は優勝を目標に掲げたが誰も本気にしなかった。しかし、1996年に初優勝を達成し、30年以上が過ぎた現在、鹿島は日本で最も多くのタイトルを獲得したクラブだ。他人に何と言われようと、高い目標を掲げて努力を続けることが大切なんだ』と語っていた。その考え方を踏襲すれば、日本代表がW杯優勝を目指してプレーするのは正しいと思う」
チアゴ記者は、例によって日本代表と日本選手に深い愛情を示しながらも、彼が考える問題点と課題を率直に語ってくれた。
フットボール王国ブラジルのメディアも、現在の日本代表を非常に高く評価している。
とはいえ、世界にはアジアとは異次元の強豪国が目白押しだ。これから2026年W杯開幕まで、1年3カ月たらず。今後のサムライブルーの成長の過程を、じっくり見守りたい。〈サッカー日本代表特集:つづく〉
