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関係者の証言はいずれも食い違い…「プロレス史上最大の謎」42年前のアントニオ猪木“舌出し失神事件”の真実は? 実弟は「自作自演の可能性も…」
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欠端大林Hiroki Kakehata
photograph byHiroki Kakehata
posted2025/03/19 11:06

今から42年前、ハルク・ホーガンに敗れ救急搬送されたアントニオ猪木。一方で、その後の顛末には多くの怪情報が飛び交うことに…
「外国人選手のギャラのペイデー(支払日)はシリーズ最終日の午前中と決まっていて、ホーガンのギャラはこの日の試合前に事務所で現金払いされています。彼がそんな心配をするはずがありませんし、そもそも櫻井さんはそこまで英語力がなかったと思います」
前田日明の言葉にも矛盾が…
3人目は前田日明だ。前田はアントニオ猪木が存命中だった2022年8月、自身のYouTubeチャンネルでプロレスラーの拳王を相手にこう語った。
「猪木さんが鉄柱にバーンってぶつけられてベロ出してのびちゃった。あの時に会場からシーツ被せられて、ストレッチャーに乗せられて猪木さんの代わりに病院へ行ったのは俺だからね」
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何と、猪木は救急車自体に乗っていなかったというのだ。
ただ、これは検証するまでもなく当時の報道写真に顔の見える猪木が救急車に乗せられる写真が残っており、どうして前田がこのような事実と異なる発言をしたのかは謎である。
ただし、前述したように「猪木の退院」時にすっぽりと毛布をかぶせられた男が病院を出る姿が目撃されており、もし前田がこのとき「入院中」の設定だった猪木の身代わりになっていたとしたら、そのことを指している可能性はある。当時の前田は新間氏と密接な関係にあった。
いずれにせよ、関係者が意図的に不正確な話を広めた結果、この「失神事件」はさまざまな憶測を呼ぶことになってしまった。
猪木はなぜ、病院を抜け出したのか――その疑問は、そもそもなぜリングで「失神」しなければならなかったのかという謎の延長上にある。
啓介氏は語る。
「あの事件は、アントニオ猪木の自作自演だったという説があります。私は兄貴から本当のところを聞いたことはなく、真相は分かりません。ただ、失神を演じた可能性を否定はしません。私がなぜそう思うのか、当時の状況をお話ししたいと思います」
実弟が語ったのは、当時のアントニオ猪木を取り巻く危機的な状況だった。
<次回へつづく>
