関係者の証言はいずれも食い違い…「プロレス史上最大の謎」42年前のアントニオ猪木“舌出し失神事件”の真実は？ 実弟は「自作自演の可能性も…」 

　続いて東スポの櫻井氏だ。2003年に刊行された『プロレススキャンダル事件史』（宝島社）のなかで、櫻井氏はこう書いている。

＜その深夜、午前1時ごろに今度は芸能レポーターの梨元勝氏から電話がかかってきた。「梨元ですが…恐縮です。あの…いま猪木さんが奥さんと一緒に病院を出ていっちゃったんですが……」＞

　そして、櫻井氏が猪木本人に取材したという「コメント」は次の通り。

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＜「…梨元さんに見られているとは思わなかったな。脳震盪を起こしたのは事実だが、手当てを受けて意識を回復するといろいろなことを考えて眠れなくなった。俺のわがままだが、家に帰りたくなって啓介に車を持ってこさせた。ウチの奴（美津子夫人）とそっと抜け出したんだ。家に帰ったらぐっすり眠れた。朝早く新間に叩き起こされて明け方にそっと病院に戻った。まあ…俺とすれば、軽率だったよ」＞

東スポの編集局長だった故・櫻井氏　©Hiroki Kakehata

　啓介氏は櫻井氏の言説にも疑問を呈する。

「梨元さんの存在には私も気づきませんでしたが、まだ数人の記者が残っていたのは事実で、脱出を目撃されていた可能性はあったと思います。ただ、東スポの幹部だった櫻井さんは、新間さんのお墨付きを得ていたこともあり、兄貴に取材せず、自分の想像でアントニオ猪木のコメントを紙面で書いていたこともあるのです。兄貴がこの事件について、櫻井さんに詳細を語ることはあり得ないですし、いったん家に戻って翌朝、病院に戻ったということもありません」

梨元氏からの連絡で「猪木の病院脱出を知った」？

　櫻井氏は「梨元さんからの連絡で猪木の病院脱出を知り、深夜に新間氏の自宅に電話した。自宅にいた新間氏はそれを聞いて絶句した」という趣旨の説明をしているが、これは新間氏が「徹夜で病院に張り付いていた」という自著の記述と矛盾する。

　また、櫻井氏は「京王プラザホテルに宿泊していたホーガンに電話したところ、彼は猪木の容態もさることながら、新日本プロレスがファイトマネーをきっちり払ってくれるのか、それを心配していた」とも書いているが、啓介氏はそれも否定する。

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