「翔哉、日本代表でプレーしたくないか？」27歳で引退…“早熟の天才”菊原志郎が“天才少年たち”に贈った言葉「昔は僕も翔哉と同じでした」 

　中島も菊原とのやり取りは、いまでも覚えている。「志郎さんはサッカーのやり方を教えてくれた人。一緒にプレーしたときには感覚がすごく合った」とうれしそうに話していた。

　吉武監督にはヴェルディに気になる逸材がいることは前々から伝えており、時期を見計らい、招集してもらうつもりだった。古巣の関係者に定期的に連絡を入れ、中島の変化をチェックし、自らも視察に何度も出向いた。

「翔哉は少しずつ変わっていきました。もう大丈夫だというタイミングで、吉武監督に見てもらったんです。代表キャンプでよくないプレーをして低い評価を受ければ、次の招集は難しいですからね」

東京ヴェルディ時代の中島翔哉（2012年）©︎Masashi Hara/Getty Images

伸びる選手の共通点

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　2014年までJFAで働いた後は、横浜F・マリノス、中国の広州富力、松本山雅FCで育成年代を指導し、アカデミー指導者を養成する役職にも就いた。現場に長くいると、周囲に「天才少年」と呼ばれる10代前半の選手たちも何人も見てきた。彼らに共通するのは、夢中になって得意なことに取り組み、他よりも目立っていることだという。

「現代サッカーでは一芸だけでは先で行き詰まります。なかには伸び悩む選手もいました。でも、僕はそういう選手たちこそ、時間をかけて対話しながらプレーを整理させ、高いレベルでできることを増やしていってもらう、そうやってトップに上げていきたいんです。自分のプレースタイルを決めつけず、考え方や意識を変えて努力すれば、苦手なこともできるんだ、というところに気づかせてあげたくて」

　菊原は早くに引退し、指導者になったことをプラスにとらえている。より多くのことを学び、経験を積めた。それこそが、後悔していない理由である。育成年代で関わってきた選手たちの名前を挙げれば、富澤清太郎、菅野孝憲、南野拓実、中村航輔、喜田拓也、山原怜音らと切りがない。すでに現役を退いた者もいれば、現在もJリーグの一線で働くプレーヤーもいる。

菊原コーチと笑顔で写真に収まる南野拓実（右）と石毛秀樹（写真：本人提供）

　ふとしたタイミングで彼らから連絡が入ることも珍しくない。昨年末には横浜F・マリノスのアカデミー組織で育ち、いまはトップチームで活躍する山根陸と連絡を取り合い話を聞いてアドバイスをした。ジュニアユース時代の教え子で、何かあれば、相談に乗っているのだ。

「僕も指導者として経験を積み、この選手には、このタイミングで、どういうアドバイスが適切なのか、整理されてきました。もし教え子が僕みたいに27歳くらいで『思いどおりにプレーできないから引退します』と言ってきたら、『もうちょっとやってみなよ。そんなことは普通だから』と助言しますね（笑）。当時は僕にそうやって言葉をかけてくれる人がいなかったので」

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