日本一奪還へ“最大の補強”か…11年ぶり巨人復帰の橋上秀樹作戦戦略コーチが語る“ジャイアンツの野球改革”「打てないことを前提に戦う」の真意とは 

打てないことを前提にして戦う

「基本的に野球というのはバッターの方が不利な戦いを強いられる競技じゃないですか。その中で打てることを前提にしていくと、どうしても不利な状況の中で五分の戦いを強いられる。でも、打てないことを前提にして自分が不利な状況にあることを自覚しながら戦うなら、事前に投手の投球の傾向やキャッチャーを含めた配球の特徴などを頭に入れて準備する。そういうデータを用いて何とか戦って、少しでも確率を上げていこうという発想になる。その辺の打席に向かう前の心境とかデータを含めた準備、そういったものにちょっと違いが出てくるのかなというのがありますよね。前回もそのことを中心に選手と話し合って、多少変化が生まれたと思います」

　巨人の2011年と12年のチーム打撃成績の変化（カッコ内の数字はリーグ順位）

　　　　　11年　　　　　12年
　打率　　.243（5）　　.256（2）
　得点　　471（3）　　 534（1）
　本塁打　108（1）　　   94（1）
　四球　　323（6）　　 455（1）
　三振　　1003（2）　  952（2）
　出塁率　.298（4）　   .326（1）
　OPS　  .652（3）　　 .693（1）

ADVERTISEMENT

――橋上コーチの師匠でもある野村克也さんの“弱者の野球”という視点ですね。

「そうですね。ピッチャーとバッターという視点で言ったら、バッターの方がどうしても弱者なんです。そういう意味で言えば弱者の戦いというところに繋がるかもしれないですね」

データを活用する野球で感性は活かせるか？

――いわゆるID野球というのは、データを重視し、そこから攻守に戦略、戦術が立てられていく。これは今の野球ではかなり主流の動きになっています。一方でつい最近にはイチローさんがデータ偏重の野球に対する疑問を投げかけた発言があり話題になりました。

　イチローさんの発言　1月にオンエアされた元ニューヨーク・ヤンキース、松井秀喜さんとのテレビの対談番組内で、今の野球を観ていて「ストレスが溜まらないか？」という松井さんの質問に「溜まる、溜まる、めっちゃ溜まるよ。退屈な野球」と同意。ビッグデータを背景にした画一的な野球のあり方を「すべてデータで管理する」「（データが）常にある状態。見えるところにあるので、（選手が）頭を全然使っていない。まさしくMLBの野球がそうなっている」と語った。

　橋上コーチはデータを活用する野球の中で考える要素、感性を活かせる範囲をどう考えますか？

【次ページ】　心理を読み合いに野球の楽しみは残っている