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《つば九郎担当スタッフ逝去》さらば“戦友”…最も知る仕掛け人の秘話「つば九郎なら巨人に勝てる」「フリップ芸はドアラのイベントの暴走から」
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKenjiro Kato
posted2025/02/23 11:03

つば九郎の「仕掛け人」としてファンにも知られていた加藤謙次郎氏。数々の秘話を明かしてくれた
「僕の立場ではチームのことは何もできないですけど、プロモーションをする上で、何か巨人に勝てる要素があるのかな、と考えた時真っ先に浮かんだのがつば九郎でした。つば九郎なら勝てるんじゃないか、って」
ドアラとの絡みで出た「フリップ芸」
インターネットが急速に普及していく時流に乗って、当時つば九郎のブログは大きな注目を集めていた。可愛らしい見た目だけではなく、センスあふれるその「言葉」やユーモラスな「パフォーマンス」をもっと発信していけるのではないか。加藤さんは、Aさんと話し合いながら、さまざまなアイディアを練った。
「2008年に名古屋でドアラが出版した書籍のイベントがあった時に、ゲストで出たつば九郎がフリップ芸みたいなのをやったんです。キャラは地のまんまで事前の打ち合わせもなし。好き勝手書いて暴走していたんですが、お客さんが本当に楽しそうに笑っていた。これは面白いな、と思いました」
マスコットが契約更改?
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2009年12月25日、初めて仕掛けたのが「契約更改」だ。当時新橋にあった球団事務所をつば九郎が訪れ、担当記者を集めて、得意の筆談で選手さながらの契約更改会見を行った。
〈球団マスコットの「つば九郎」が契約更改。年俸2896(ツバクロウ)円プラス出来高で合意した。バック宙ができたら2896万円、ただし子供を泣かせた場合とペンギンと間違えられた場合は大幅減俸を約束した〉
オフの話題探しに困っていたスポーツ紙の番記者とも協力して、こんな大真面目な記事が紙面に掲載された。2010年からは、つば九郎がホームタウンである東京23区を訪問する「つばさんぽ」がスタート。スケッチブックを片手に地域の人たちと直に交流する機会が増え、筆談でのトークショーの依頼も増えていった。