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「ちゃんとやってよ」イチローの激励に“困惑”した智辯和歌山の4選手はドラフト候補に…「イチローさんのワードセンスのスゴさを感じてます」
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田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2025/02/18 17:00
2020年冬に智辯和歌山高校野球部を指導したイチロー。その翌年の夏の甲子園で智辯和歌山は優勝した
「それまでは縮こまって投げてしまっていたっていうか、自信が持てていなかったんです。イチローさんにそう言っていただいてからは『小さなことで悩むのはよそう』って思いましたし、しっかりと腕を振って投げられるようになりました」
甲子園決勝で思い出したイチローの言葉
徳丸もそうだ。'21年夏の甲子園決勝で、イチローの言葉を思い出したという。
初回、1アウト一、三塁と先制のチャンスで打席が巡ってきた際に、泰然自若としていた自分がいた。その境地に辿り着けたのは、イチローから授かった「プレッシャーとの向き合い方」があったからだ。
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徳丸にとって意外だったのは、日米通算4367本ものヒットを積み上げた名選手にも、「プレッシャーはある」と言われたことだ。'09年WBC決勝の韓国戦。延長10回に放った値千金の一打について、「心の中で実況しながら打席に入った」という逸話を交えながら、「そのなかで、どう結果を残せるかが大事」と説かれた。
「本当はイチローさんに、打てるようになる言葉を求めていたんですけど『僕だってプレッシャーを感じるよ』と言われて。あんだけすごい人でも『結果を出すしかない』と必死なんだと知れたことが、自分にとって一番の収穫でした」
甲子園決勝という大舞台でも平常心で打席に入れた徳丸は、2ストライクと追い込まれながらもセンターへの犠牲フライで先制点を演出。この試合で2安打3打点と4番の役割を果たし、智辯和歌山は夏3度目となる高校野球の頂点に立った。
「日本一を本気で目指しているレベルを最初に見たい。トップを見てみたい」
イチローが自らの意志で交流したいと希望し、真っ直ぐなエールを送った智辯和歌山は“ちゃんとやって”みせた。
高校卒業後も、ふとした時に頭をよぎる
あの日の約束は、ここで終わりではない。
智辯和歌山を巣立った選手たちは、それぞれが進んだ先で「ちゃんとやってよ」を心の支えにしている。
甲子園決勝で胴上げ投手となったエースの中西は、当初、高卒でのプロ入りを目指していた。それが一転、大学進学に舵を切ったのは、同世代のライバルの存在があったからだ。'22年にドラフト1位でDeNAに入団した市立和歌山の小園健太ら、全国トップクラスのピッチャーと自分を比較し、「根本的な能力で敵わない」と冷静に決断。「この4年間でもう一回、真剣にプロを目指す」と、青山学院大に進み研鑽を期すこととなった。
中西は大学でこそ、ふとした場面で「ちゃんとやってよ」と、イチローから釘を刺されているような気持ちになるのだという。
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