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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「うるせー、クソ指導者!」暴言を吐いた問題児が…「俺、先生になりたいんです」“まるで漫画の主人公”と話題を呼んだ“あの高校生”その後
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuko Tanaka
posted2025/02/13 11:03
鳥取県勢として初めて春高バレーで勝利を挙げた鳥取中央育英高校。エース星原優来(3年)の活躍は大会を通してインパクトを残した
思い直した星原は400字詰めの原稿用紙にめいっぱい、反省の思いを綴った。
『イライラしてひどいことを言ってしまったことを反省しています。これからは、キャプテンとして部に貢献したいです』
丁寧な字で、まっすぐ思いをこめた反省文を目にした桑名は、星原の謹慎を解いた。
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春高に出場すること、そこで1勝を挙げることがいかに難しいを理解していた指揮官が、誰よりも星原の復帰を待ち望んでいたのかもしれない。『彼らが3年になる時は勝負できるチームになる』。2年前によぎった予感を再び頭の中に巡らせていたとき、星原の行動でそれが確信に変わった。
練習へ復帰する前、星原は「キャプテンとして頑張ります」と決意を述べると共に、部員全員の前で言った。
「毎日の練習をサボらず、後悔がないように。1年、あっという間だから。最後まで一生懸命やりましょう」
地区大会や夏のインターハイと高校バレーの大会は多いが、最大の目標は春高。鳥取県勢としてまだ届かない1勝を挙げるべく、全員で決めた目標は「一戦必勝」。キャプテンの謹慎から始まった新チームに強い結束が生まれた瞬間だった。
そして、すべてが結実する時がやってきた。
鳥取県勢として春高バレー初勝利
2025年1月5日、春高バレー1回戦。鳥取中央育英高は東京学館新潟と対戦した。
第1セットは27対25で先取したものの、第2セットは22対25で失い、第3セットも13対16と先行を許した。攻撃の中心で打数の大半を担う星原には常に2枚、時に3枚のブロックが揃い、攻撃を阻まれる中で3点を追う苦しい状況。ここで星原は相手の虚を突くプレーを見せた。
相手の攻撃をセッター井上大和がレシーブし、コート後方にいた星原が攻撃に入る。相手がバックアタックを警戒したことを見た星原は、空中で姿勢を変えると、ライトの御古にトスを上げた。男子バレー日本代表で石川祐希や高橋藍が試合で見せるたびに会場を沸かせるフェイクセットだった。
ドンピシャのタイミングで入ってきた御古が決め、14対16。ビッグプレーにどよめきが起こったシーンを、星原が笑いながら振り返る。
「練習でいくらやっても全然合わなかったんですよ。先生からも『合わないからやるな』って言われていたんですけど、本番でやったらブロックもついてきた。完璧に決まって、めちゃくちゃ気持ちよかったです」
この流れを絶対に離さない。士気を高めるべく星原はその後も得点を重ね、大逆転。26対24で鳥取県勢として春高で初の1勝を手にした。


