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「あれ、いつもと違う…」英国人記者が驚いた井上尚弥“衝撃KO”までの静けさ「緊張感を欠き、完璧ではなかった」識者が指摘する“最強ゆえの難しさ”とは? 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2025/01/26 11:30

「あれ、いつもと違う…」英国人記者が驚いた井上尚弥“衝撃KO”までの静けさ「緊張感を欠き、完璧ではなかった」識者が指摘する“最強ゆえの難しさ”とは?<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

多くのトラブルを乗り越えて実現した2025年初戦。井上尚弥を追い続けてきた記者の目にはどう映ったのか?

 豪快なKO劇は今回も見事でした。リング上のボクサーは相手がどういう状態かを感じられるもの。キムは4ラウンドにパンチを受けてすでにダメージを受けていたにもかかわらず、井上を挑発するようなポーズをしたのは賢明ではありませんでした。そんな仕草をすれば、“モンスター”はアタックしてくるに決まっています。案の定、井上は攻め込み、試合はそこで終わりました。

 細かく振り返ると、まずボディブローが効き、動きを止められたのが挑戦者にとって致命的でした。その後に井上は強烈なワンツーを打ち込み、キムは破壊されたのです。韓国出身のチャレンジャーはあれほどのパンチを受けたことはなかったでしょうし、そもそもこのレベルの相手と戦ったことはなかったはずです。

「イノウエは打たれ強さも備えている」

 2ラウンド以降、井上もキムの左パンチを何度か浴びました。井上はとてつもないボクサーですが、もともとフロイド・メイウェザーのように天才的なディフェンスを売り物にする選手ではありません。極めて攻撃的で、反撃を受けるシーンは目にします。

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 今後、キムと同じサウスポーの中谷潤人のような強豪の強烈な左パンチを浴びたとすればという懸念はありますが、それでも今回の被弾はそこまで気にする必要はないと思います。重要なのは、井上が一定以上の打たれ強さも備えているように思えること。昨年5月、ルイス・ネリが井上を初回にダウンさせた左パンチは他の多くのボクサーに深刻なダメージを与えるのに十分なものに見えました。井上は撥ね飛ばされるように倒れましたが、以降も戦力は損なわれませんでした。

 そのアグレッシブなスタイルがゆえに、逃げ回る選手が相手でない限り、またパンチを浴びることもあるのかもしれません。それでも井上はある程度の被弾リスクを冒しながらも攻め続けるはず。それもまた彼を魅力的なボクサーにしている要因なのです。

【次ページ】 「今回は10点満点で6点ぐらい」

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