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「J3から始めたい」国立5万人を驚かせた“異色の小さなドリブラー”流経大柏・亀田歩夢18歳の意外な選択「むしろ(富山が)J2昇格して危機感ある」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2025/01/15 11:02
選手権は準優勝に終わったが、大会を通して技術の高さを見せつけた流経大柏・亀田歩夢(3年)。来季からJ2昇格を果たしたカターレ富山でプレーする
「課題を克服することが楽しかった」と話す亀田のスタイルは、高校選びにも大きく影響を与えた。
フットサル仕込みの高い技術力は、個にフォーカスを当てた強豪校にとっては魅力的に映ったはずだ。実際にいくつかの高校からオファーはもらっていたが、亀田が選んだのはフィジカルとプレー強度が圧倒的に求められる流経大柏だった。
「テクニックだけだったらプロでやっていけないとずっと思っていたので、ごまかせない環境に行きたかった。トップチームがプレミアリーグにいるとか、インターハイ、選手権を目指せるとかそういう考えは一切なくて、ただ技術もフィジカルもトップクラスの環境で自分を磨きたかったんです」
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1年時は圧倒的な体格差に怯むことも多かった。だが、「この強度でやり続けられれば、必ず自分もそのレベルに追いつけると思っていた」とより創意工夫をやり続けた。結果、亀田のドリブルはチームの武器として猛威をふるった。
プロの壁を痛感も「努力でなんとかなる」
さらに大きな成長を促したのが、Jリーグ王者・ヴィッセル神戸の練習参加だった。高3のドリブラーはその差に衝撃を受けた。
「タッチ制限のパス練習で他の選手が当たり前のようにファーストタッチでピタリと止めて素早い状況判断とスピードで次のプレーをする中で、僕はファーストタッチでミスをしていた。前提が全くできていない現実を突きつけられました」
正式オファーは届かず、その後、参加したJ2のクラブにもフィジカル不足を指摘された。しかし、幼少期から課題をバネにしてきた亀田は、現状をポジティブに捉える力があった。
「どれも今は足りていないんだなと思えたし、同時に課題が明白になるので日々の意識を定めやすくなった。それに、これまでのように自分の努力次第でなんとかなるとも思えたんです。そもそも僕は下から這い上がっていく方が性に合っているので、(当時J3の)カターレからオファーを頂いたとき、迷いは一切ありませんでした」
亀田は間髪入れずに続ける。
「僕は静かに燃えるタイプ。大きいことは口にしませんが、常に狙っているというか、どこかでひっくり返したいという気持ちが強いんです。僕の性格は誰かに負けるのが嫌なタイプなので、サッカーでは同じポジションの人には絶対に負けたくないですし、相手が自分より何かが上なら、自分は勝てる武器で上に行く。それだけなんです」
むしろ、プロ1年目のステージがJ2に上がったことで、危機感すら抱いている。