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「やっぱりツンデレなんですよ」大谷翔平インタビュアーが語った真相…大谷がふと口にした一言「なるほど、で終わったら僕は見限られていたかも…」
text by
石田雄太×糸井重里Yuta Ishida & Shigesato Itoi
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/15 11:01
大谷翔平唯一のインタビュー本『野球翔年II MLB編2018-2024 大谷翔平ロングインタビュー』の著者・石田雄太に、対談の名手である糸井重里が迫る「大谷翔平論」
石田 大谷選手ってどんな人ですかって質問、ものすごくされるんですけど、人の説明するのって難しいじゃないですか。それで、大谷選手を誰かにわかってもらうために、これ、もう一回褒めてもらいたいんですけど(笑)、「野球翔年」という言葉を思いついたんです。確か、クライマックスシリーズだと思うんですけど、試合前、大谷選手がリュックを背負って、帽子を後ろ向きにかぶって、ものすごくうれしそうな顔をしてバスから下りてきたんですよ。それを見たときに、今日負けちゃダメっていう試合の前にしてる顔じゃないよなあ、いつまで子どもなんだこの人はって思ったんですよね。それで、「野球翔年」というのが僕の感じている彼のイメージに一番近い、と思ったんです。
糸井 ご両親との共作だ(笑)。
石田 野球少年ってじつはそんなに純粋なばかりじゃない。自分の欲で野球やるときもあれば、子どもだからいろんなわがままもいう。そういういろんな意味を含めた「野球翔年」。純粋というだけじゃなくて、子どもっぽさが彼の武器になっていることもある。本人に、「野球翔年」っていい言葉でしょって自慢したことがあるんですが、「そうですか?」って一蹴されましたからね(笑)。やっぱりツンデレなんですよ、基本的には。そういう簡単に相手に乗っからないというか、それもインタビューの面白さとか難しさにつながっている彼の気質だったりしますよね。
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糸井 ほお。
大谷がさらっと、でも覚悟を持って口にした言葉
石田 2021年の秋にインタビューしたときに、大谷選手が「この春、二刀流は終わりにしろって言われてるのかなって思った」って、さらっと言ったときに「えっ? 今、何言った?」って訊き返したんです。「どういう意味? ふたつダメかもしれないなんてどの瞬間にどうして思ったの」って。あれも「ああ、なるほど」で終わってたら、そこで僕は見限られていたかもしれない。今思えばぞっとしますけど、それほど彼はあの話をしたときに何かしらの想いとか、覚悟をもって口にしたと思うんですね。監督からそんなこと言われてたという事実も重たいし、実際そういう覚悟を背負っていて、悠々自適に二刀流をやってきたわけじゃなかった。日本のときには栗山さんとかファイターズとか理解してくれる人がいましたけど、結局アメリカでは応援していると言いながら、どこかで隙あらば一つに絞らせようと、今年ピッチャーとしてそんなによくなかったら、すぐにバッターだけでいけっていう声がアメリカでは間違いなく出ます。だけど、大谷選手はピッチャーに対する愛情っていうのは、本当にすごい。本当にピッチャーが大好きなんですよ。ピッチャーが通用しなくて止めるというのは受け入れなければいけませんけれど、バッターをやるからピッチャーをやるなっていうのは絶対に受け入れたくないと思ってるはず。
糸井 大谷選手にとっては投手が主ですよね。