- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「毎年、クマとの闘いです」箱根駅伝10区〈踏切で足止め〉悲運のランナーは今→秋田で消防士に「何があるか分からない」震災、クマ出没…故郷を守る日々
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHaruka Sato
posted2025/01/06 11:04
現在は秋田県鹿角市で消防司令補として故郷を守る田子康晴さん
「クマはしょっちゅう出ますよ。普通にいるというか、共存しているというか、そういう場所です。冬は冬眠していますからそんなに出ないですけど、夏の終わりから冬の始まりまでは凄くてそこら辺に普通にいました。特に一昨年はすごかったです。クマに遭遇したこと? もちろんありますよ。まずは逃げます」
昨年5月にはまさに鹿角市の山林で、タケノコ採りに山に入った男性が死亡。田子さんも救助隊として遺体の回収に向かったが、その捜索の途中で鹿角署の警察官2人がクマに襲われて顔面や両腕などに大怪我を負った事故に直面した。
「毎年、クマとの闘いですよ」
「救急隊ですので、クマに襲われて傷だらけになっている方を処置したり、怪我した方を搬送したり……。ここ数年は食べ物がなくて里に降りてくるクマは増えているように感じます。簡単に食べ物が手に入るので覚えてしまうんですよ。山の方でもリンゴ畑や野菜などの農作物を食べてしまうということも多い。今のクマは人を恐れないんですもんね。この辺りは毎年、クマとの闘いですよ」
ADVERTISEMENT
忘れられない出動もある。2011年3月11日に発生した東日本大震災。鹿角市でも大きな揺れが襲った。田子さんが訥々と振り返る。
「当日は仕事をしていましたが、立っていられないほどの揺れでした。まずは消防車を全部屋外に出さなきゃいけない。幸いにもこのあたりの被害は停電くらいでしたが、テレビを見たら津波の映像が流れてこれは只事ではないぞ、と」
東日本大震災…被災地への緊急出動
翌12日、緊急消防援助隊として隣県の被災地への出動命令が下った。勤務明けの田子さんもそのまま消防車に飛び乗り、約200km先の岩手県宮古市に向かった。民家からの延焼や、津波で流された車が燃えながら漂着するなどして山火事が発生していた。