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箱根駅伝「史上最速の2区」で分かれた“エースたちの明暗” 青学大・黒田は晴れ晴れ、国学院大・平林はうつむき…駒大・篠原は「適性には勝てない」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by(L)(C)Yuki Suenaga、(R)Nanae Suzuki
posted2025/01/02 21:52
従来の区間記録を3選手が更新し「史上最速の2区」となった今大会。一方で、優勝候補といわれた大学のエースたちは明暗分かれる結果に
今回2区を走ったのは、チームに恩返しがしたいとの思いからだった。
「チームが絶対に最後は笑って終われるように、自分がどこを走れば良いかってことを監督と相談して、2区を選びました。山の神への気持ちは押し殺して、2区で区間新を必ず出して優勝するんだと。最後の600mは(5区を走った経験が)生きましたね。すごくきつかったけど走り切れました」
まさに入魂の走りだった。このレベルで2区を走るためには、エース級の速さに加えて登りの適性も必要なのだろう。
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そう思わされたのは、篠原倖太朗(4年)のこんなコメントを聞いたからだ。
1時間6分14秒の好記録ながら、区間4位にとどまった駒澤大のキャプテンは、区間新記録を出した2人に抜かれたシーンをこう振り返った。
「(黒田選手と吉田選手が後ろから来ているというのは)監督からの指示はなかったですけど、だいたい沿道の応援でわかりました。でも、追いつかれるとは思わなかったです。自分もあのタイムで走っていたので」
駒大・篠原は「適性には勝てないな」
じつは前日、先輩の田澤廉(現トヨタ自動車)が篠原の部屋を訪ねてきてくれたのだという。ニューイヤー駅伝が行われていた群馬からわざわざ駒澤大の寮に来て、かつての大エースはどんな助言を授けてくれたのだろう。
「それが、『頑張れよ』ってひと言だけ(笑)」
だが、そのひと言から伝わるものがあったという。
「ほんと自分は2区の適性がないと思っていて。でも、田澤さんも登りは苦手で、でもあれだけの走力でねじ伏せていたんだなって。だから、圧倒的な力の前では適性とかあまり関係ないのかなって思って挑んだんですけど……やっぱり2区は違いましたね。最後の戸塚の坂は、手を使って登りたくなるような壁でした。黒田君とか吉田君の走りを見ると、適性には勝てないなと思います」
ハーフマラソンと、5000mの屋外日本人学生最高タイムを持つ篠原をしても、初めての2区は苦しんだ。残念なのは、4年生でリベンジの機会がないことだろうか。
青学大の黒田はこんなことも話していた。
「(吉田君は)やっぱり強いなと思いますね。ただ僕はまだ1年あるので、来年超せたらそれで良いかなと」
記録はこうして更新されていく。各大学のエースが見せた悲喜こもごもの表情に、箱根駅伝の進化を見る思いだった。