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猛牛のささやきBACK NUMBER
「正直『飛んでくんな』と…そこまでなったのは初めてでした」オリックス・安達了一はなぜ引退を決めたのか「あのエラー」と「取り戻した誇り」
posted2024/12/31 11:06
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
JIJI PRESS
秋の高知キャンプの快晴の午後。グラウンドの隅から、「ううう」とうめき声が漏れる。宗佑磨、太田椋、廣岡大志の内野手3人が、脚をプルプルさせながら、股割りの姿勢のまま耐えていた。
一方、3人の前で手本を見せている安達了一コーチは、涼しい顔で微動だにせず美しい股割り姿勢をキープしていた。廣岡が耐えきれず腰を浮かすと、「大志、何やってんの」と優しく指導を入れる。
インタビューでそのことを聞くと、「僕はずっとやってきたから、慣れてるんで」とこともなげに言った。
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「内野手には股関節が大事なので、そこは(メニューに)入れたいとずっと思っていました。股関節の柔らかさが、今の若い子ってあまりないので。そこはバッティングにも活きるところですしね」
自ら幕を引いた現役生活
オリックスで13年間、ショート、セカンドを守り、状況に応じた巧みな打撃でもチームを支えた安達は、今シーズン限りで現役を引退した。最後の1年は選手兼任コーチを務め、引退後は一軍内野守備・走塁コーチ専任となった。
「まだ引退した実感はあまり湧いていないですね。たまに選手と一緒にやっているから。やれる時にはまだ一緒にやりたいと思っています」
わかっていたことだが、この36歳はまだやれた。1年前の契約更改で選手兼任コーチを引き受けた際には、「中嶋(聡)監督は兼任で9年やったそうなので、僕は10年を目指します」と意気込んでいた。だがそれから1年で引退を決断。
「体的には全然大丈夫だったし、怪我も特になかった。あれがなかったら、まだやっていたかもしれないですね」
“あれ”は、今年5月1日、ほっともっとフィールド神戸で行われたロッテ戦の9回に起きた。