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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「日本では稼げない、相手もいない」看護師ボクサー30歳でプロ転向の舞台裏…古びたジムで“昭和の名ボクサー”と目指す10億円のファイトマネー
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byWataru Sato
posted2024/12/30 11:05
看護師を続けながら、プロボクサーに転向した津端ありさ(31歳)
どこまでも、前向きである。楽観的な性格は、幼少期から培われてきたもの。3歳の頃に両親が離婚し、男手ひとつで4人の子どもを明るく育ててきた父親の影響は大きいという。南太平洋諸島のフランス領タヒチで生まれた母の血も引き、「ハーフでマイナスのことはひとつもなかった」とニコッと笑う。
「子どもの頃から周りのみんなより体は大きかったですし、パワーもありました。タヒチの血はボクシングにも生きています。日焼け止めも全然、塗らなくて大丈夫。日本の友人には『シミになるから肌のお手入れは大事』と言われますけど、『タヒチは太陽と友達だから、肌も強い』と思っています」
明るい未来を信じる31歳は、笑顔を絶やすことはない。日本女子プロボクシングの実情を直視しながらも、高い壁を乗り越えた先の舞台も想像する。試合を重ねて世界ランキングに入り、大和田トレーナーとともに本場アメリカのリングで戦うことは目標の一つ。女子でも中量級のマーケットは大きい。スーパーライト級4団体統一王者のケイティー・テイラー(アイルランド)は、女子史上最高となる610万ドル(約9億6000万円)のファイトマネーを稼ぎ出すのだ。
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「夢がありますよね。田島会長には『大きなお金を稼いだら、多寿満ジムをきれいにしましょう』と言っているんです(笑)。現役はそこまで長くできないと思うので、35歳までに世界のベルトを巻きたいです」
世界一の看護師ボクサーを目指し、きょうも“揺れるジム”で熱のこもったパンチを打ち込んでいる。いまのところ、チャンピオンになっても、誇りを持つ仕事を辞めるつもりはない。
〈前編から続く〉