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伝説的女性ボクサーに隠された“壮絶DVとコカイン”…「監視カメラだらけの家」25歳年上の夫コーチによる恐ろしすぎる洗脳生活とは
posted2021/10/29 17:01
text by
辰巳JUNKTatsumi JUNK
photograph by
Getty Images
「若者のスポーツ離れ」が現実味を帯びるアメリカで、ホットな分野ができている。有名選手からマイナー競技までカバーするスポーツドキュメンタリーだ。驚くべきことに、2017年から2019年にかけてのアカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画部門では、ロシアのドーピング疑惑を暴いた『イカロス』など、3年連続でスポーツジャンルが受賞している。
“若者のスポーツ離れ”と繋がる流行の背景
試合中継が激減したコロナ禍の2020年にはさらに人気が過熱していき、Netflixシリーズ『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』が各エピソード平均560万人ほどの視聴者を獲得する社会現象級の大ヒットを記録した。
2021年Maru Groupの調査によると、米国の成人のうち4人に1人が「定期的にスポーツドキュメンタリーを視聴している」と回答した。この数字は年齢が若くなるほど高くなっており、55歳以上が10人中1人である一方、18~34歳層では3人中1人にのぼる。
若者間のスポーツドキュメンタリー人気は、ある種、この層の「スポーツ離れ」とつながっている。膨大なコンテンツが供給される今、飽きやすい若年層にとって多くの人気競技の中継試合が「長すぎる」と指摘されている。ゆえに、ハイライト紹介動画を観て済ませる若者も少なくないわけだが、こうした消費スタイルは、ドキュメンタリーと好相性なのだ。スポーツドキュメンタリーは、限られた時間内で臨場感ある競技シーンとエモーショナルなドラマ、完結する物語を提供する。さらに、有名選手にまつわる衝撃的な新事実を明かし、SNSで話題を作ることも多い。
2021年にNetflixで配信された『Untold: 勝利の拳とその代償』は、今日のスポーツドキュメンタリーの魅力をわかりやすく詰め込んでいる。
「女性ボクシングのパイオニア」の壮絶な人生
主人公となるのは、1990年代に活躍した「女性ボクシングのパイオニア」、クリスティ・マーチンだ。「炭鉱夫の娘」の二つ名を持つ彼女は、人口たった500人とされるフロリダ州の町からボクサーになった。
女性ボクシングがニッチだったキャリア初期には無報酬の試合も行ったというが、1989年にはマイク・タイソンから世界タイトルマッチの前座を任され、性差別的なブーイングに晒されるなか血まみれの姿で激戦を繰り広げたことで「タイソンから主役を奪った」と評されるほどの喝采を得る。そこからはTVや雑誌に引っ張りだこなスター街道だ。彼女の人気によって女子ボクシングの興行試合も増える大ブームを巻き起こしたという。