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「疲れない!」「それだとブラック企業です」棚橋弘至が新日本社長として東京ドーム大会で狙う次世代ブレイク「3年後理論」と「引退ロード」の野心
posted2025/01/03 11:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
棚橋弘至は、疲れを知らない。
しかしそれが新日本プロレスの先頭に立つ社長として、社員たちのやや冷たい視線を浴びることになるなんて思ってもみなかった。
リング上では100年に一人の逸材も、さすがにバツが悪そうな表情を浮かべた。
「それだとブラック企業に」
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「社長に就任してオフィスに『疲れない!』とバーンって張り出したんですよ。そうしたら『社長、それだとブラック企業に……』とツッコまれてしまいまして、すぐに剥がしました。『社長は疲れないままでいいんですけど、社員の疲れは認めてください』と。もちろん社員のみなさんの疲れは認めています!!」
棚橋は立命館大法学部在学中に新日本の入門テストに合格し、2000年代のプロレス低迷期をエースとして引っ張ってプロレスブームの再来を呼び込んだ最大の功労者である。
2023年12月、第11代社長に就任。プロレスラー兼社長としてこの1年間を突っ走ってきた。
経営を一から学び決算書を読み、不慣れなことは大変ではあってもストレスには感じない。ここまで年間の休みは7日だけ。それでも社長業とプロレスラーの両立を苦に思うことなど一切なかったという。試合がない日はトレーニングを済ませてから朝10時の出社に間に合わせることもあれば、午後6時に退社してからジムに行くパターンもある。
社長→プロレスラーへ光速で切り替え
社長としての顔とプロレスラーとしての顔をパッと切り替えられるのは、何とも棚橋らしい。
「僕は光よりも(切り替えは)速いと思いますよ。午後5時45分くらいに全部仕事を片づけたら、ラットプルダウンのトレーニング動画を見て、ジムへのモチベーションを上げ始めていますから。ちょっと険しい顔をしながら、ですけど(笑)」
社員が仕事をしているなか、プロレスラーモードになってしまうと士気にかかわる。考え込むような仕草で仕事のフリをしつつ、光速の切り替え作業にスイッチする。常に先のことを考える人だからこそスムーズな両立を可能としているのかもしれない。