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英国紙が批判「カマダは存在感が薄い」“天才”鎌田大地がクリスタルパレスで苦しんでいる「自分が想像していたサッカーではない」現地記者に本音を語った
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田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byGetty Images
posted2024/12/25 17:45
プレミアリーグ1年目の鎌田大地(28歳)。「推定年俸10億円以上」クラブにとっても大きな投資のため厳しい声もある
「僕の特徴として、チームの(調子の)良し悪しが、自分のプレーにかなり影響しやすい方だと思う。もう若くもないので、ヨーロッパに来てから色々経験もしている。昨シーズンのラツィオの時もそうでしたけど、チームが最初良くない状態で、自分自身もなかなか良いプレーができずにズルズル行ってしまった。今年もそれと似たようなところがすごくある。ただチームは今、勝ち点を取れなかった最初の頃と全く違う。僕自身も中に入った時のやりやすさが全然違うので、チームが良くなることは、僕にとってもすごく大事かなと思います」
“香川真司の苦しみ”を思い出した
鎌田の話を聞きながら、「似たようなことがあったな」と、筆者はふと思い出した。それは、マンチェスター・ユナイテッドでプレーした香川真司である。
在籍1年目は、名将アレックス・ファーガソンが指揮を執った。プレミアリーグで13度の優勝経験を持つこの指揮官は「柔」のエッセンスを持つ香川に高い期待を寄せていたが、わずか1年で監督業を引退──。後任としてやって来たのが、守備的なサッカーを志向するデビッド・モイーズだった。フィジカルと守備重視のサッカーとなり、香川は持ち味を発揮できなかった。
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ただ香川のケースと違うところは、クリスタルパレスの監督がフランクフルト時代の恩師グラスナーであること。グラスナーとしてはチーム改革の途中にあり、そこに成績不振も重なって、鎌田のチームへの組み込み方について最適解を見出だせていないように映る。たしかに鎌田は苦戦しているが、監督がグラスナーであるかぎり、まだまだチャンスはあるだろう。
「ほんとにやりやすい」三笘の“鎌田評”
実際、周囲の「鎌田評」は非常に高い。例えば、日本代表でチームメートの三笘薫は次のように語っている。
「(鎌田は)頭の良い選手ですし、走れる選手でもある。ポジショニングについても、攻守両方で本当に考えて(立ち位置を)取っているのがわかります。僕は代表で一緒にやっていて、ほんとにやりやすい。人と人を繋ぐ役割というのはすごいと思っています」
こうした考えは、当のグラスナー監督も一緒である。「最初の頃、チームが結果を出せなかったので、鎌田のスタートは少し不運だった」と語る50歳の指揮官はこう評する。「ダイチにはスペースを見つけたり、ボールを適切な場所に動かす能力がある。サッカーIQが非常に高い」と。
鎌田にとって、今は我慢の時だろう。今季のクリスタルパレスの目標は、あくまでもプレミア残留だ。冬の移籍市場で大型補強に動く可能性は低く、今季は現在の戦い方を貫くと見られる。鎌田にとって試練の時はしばらく続きそうだが、例えば来夏の移籍市場で、グラスナー監督が望む選手を補強できれば──。鎌田を取り巻く環境も大きく変わるだろう。
フランクフルトが欧州リーグの頂点に立った際、元イングランド代表MFのジョー・コールは「カマダはまるで宝石のようだ」と興奮気味に話していた。
世界最高峰の舞台プレミアリーグで、ダイヤが光り輝く瞬間を、静かに、そして冷静に待つことにしたい。

