Number ExBACK NUMBER
「監督は絶対的な存在であるべき」「学生の前で夫婦ゲンカはしない」青学大を箱根駅伝の常勝軍団にした原晋監督と妻の“夫婦のルール”
text by
原美穂Miho Hara
photograph byAFLO
posted2025/01/03 06:00
寮母・原美穂さんが語る、青学大・原晋監督との“役割分担”
監督とわたしの間には、いつしかしっかりとした役割分担ができてきました。それは、監督は「学生の走りの面倒を見る」、わたしは「学生の生活の面倒を見る」、というものです。わたしも少しずつ、陸上とはどんな競技なのか、どれくらいのタイムで走れるといいタイムと言えるのか、この練習にはどんな意味があるのか、などがわかってきましたが、そこについてはあまり口を挟まないようにしてきました。万一、監督とわたしの言っていることが異なっていたら、学生は戸惑ってしまうからです。青山学院大学陸上競技部では、学生が一番の主役です。その主役を、寮母の余計な一言で迷わせてはならないと思います。
学生から「奥さん」と呼ばれるようになった理由
ですから、どれだけできているか不安なところもありますが、できるだけ学生の自主性を尊重してきました。自主性を促すため、あえて受け身になることもありました。
わたしは学生に「奥さん」と呼ばれていますが、これは誰かが最初に「奥さん」と呼ぶようになって、それが定着したものです。もし誰かが「美穂さん」と呼んでいたら、「美穂さん」と呼ばれていたかもしれません。あとになってから友だちに、学生に奥さんと呼ばれるなんて変だと言われたことがあり、それもそうかなと思いましたが、「原さん」では監督も原さんだから何と呼ぼうかと悩んだ末に学生がたどり着いた「奥さん」を、わたしは大事にしたいのです。
ふり返ると、寮でのたいていのルールは、このように学生主導で整ってきました。学生たちが自分事として考えたルールは、しっかり定着しますし、その自主性が学生の成長を促しているのだと思います。《第2回に続く》