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「大谷翔平から怒りや悲しみが」水原一平事件への対応、真美子夫人とデコピンは「いてくれて良かったな」…番記者が見た“取材中の口調と表情”
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNanae Suzuki
posted2024/12/29 11:04
波乱万丈の2024年となった大谷翔平。長年にわたって取材する番記者が取材中に見た表情とは
4月3日。本拠地でのジャイアンツ戦で、開幕から自己ワースト40打席連続ノーアーチで迎えた4打席目で移籍後初本塁打となる今季1号を放ち、勝利に貢献した。
「僕の中では長かったなという印象が強いので、早く打ちたい、早く打ちたいなっていう気持ちで、いいアットバット(打席)からかけ離れていくという状態だったので、これを機に自分の打席を継続したいなと思います」
個人成績よりチームの勝利を第一に重んじる大谷が、本塁打を“打ちたい”と明確に言ったことはなかった。それも“早く打ちたかった”という。本塁打を打つことは勝利に直結するため、何も悪いことはない。ただ、これまでは個人主義というような無用な誤解を生みたくなかったのだろう。大谷の人間らしさが垣間見えた瞬間だった。
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4月8日のツインズ戦前もそうだった。米メディアから水原元通訳の“事件”について問われた。
「野球をやる時はその事は考えていないです。変な話、やってきた技術は基本的には変わらないと思うので、それを信じてグラウンドの中で100%表現するのが、僕の仕事なので。グラウンドの外で何があっても変わらないところかなと思います」
「夫人とデコピンがいますが?」「いてくれて良かったな」
変えられない過去に執着するのではなく、変えられる現在、未来に全力を注ぐ。ただ、今年の大谷の周囲はあらゆる変化があった。「真美子夫人、愛犬デコピンがいますが、自宅での過ごし方の変化は?」。普段はプライベートの質問には答えないが、この時ばかりは答えた。
「基本的な生活のリズムは変わっていないです。ギリギリまで寝て来る感じなので。基本的には変わっていないですけど、ここ数週間いろいろあったので、となりに誰かいるかどうかはだいぶ違う。そういう意味ではいてくれて良かったなと思う時はあったかと思います」
となりの“誰か”は真美子さん、そして愛犬デコピン。“思う時はあったかと思います”と、どこか客観的な言い回しを含め、シャイな大谷らしい回答でありながら、これまで見せなかった素顔だった。
〈「大谷語録30選」編につづく〉