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格闘技PRESSBACK NUMBER
三沢光晴夫人ら被害は「1億円超」…プロレスリング・ノアを襲った“巨額詐欺事件”の手口は? 急逝「昭和プロレスの語り部」が明かした“ノア崩壊”ウラ話
text by
欠端大林Hiroki Kakehata
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/12/04 11:16
故・三沢光晴が立ち上げた「プロレスリング・ノア」を震撼させた巨額詐欺事件。11月に急逝したマイティ井上が明かしていたウラ話とは?
井上さんは泉田を援護射撃するだけでなく、本人の具体的な収入につながるよう、筆者に「泉田手記」の公表を提案した。
「泉田の本でも出してやってくれませんか。事情があって当座の生活費が必要なんです。だまされたあいつもアホやけど、もっと悪いのはかつての仲間を見捨てるノアでしょう。それにしても三沢がおったら、こんなことにはなってないはずなんだが……」
ほとんどのノア選手が泉田との連絡を遮断するなかで、後輩の救済に動いた井上さんの「義侠心」は心に響くものがあった。実際、泉田本の出版は実現し、かなりの反響を得たことで泉田はまとまった額の原稿料を手にしたが、それによって仲田龍GMを筆頭とする当時のノア執行部と泉田の断絶は決定的になった。
ノアに反旗を翻してでも「仲間を守った」井上
当時、泉田を支援する行為は「反ノア」と見なされても仕方がない状況だった。ノアOBである井上さんは、現役組との人間関係もあったはずだが、それでも躊躇なく泉田を後方支援した。その行動は、かつて「自分だけが良ければいいのか」と新日本に移籍したストロング小林を公然と批判した姿とも重なった。
固い絆で結ばれていたかのように見えた泉田と井上さんだったが、2人の関係はあるとき破綻する。その原因は、主に泉田側にあった。
泉田は、その頑強な体格とは裏腹に非常に繊細な性格の持ち主で、他人に対して自分への同調を過度に求める傾向があった。また無類の電話魔でもあり、自分の話を聞いてくれる人に対しては1日何度も電話をかけ、短くても数十分、ときには1~2時間以上も敵対者への不満を訴えるという、忙しい社会人にはとても対応できないアクションを繰り出すのだった。
当初は孤独な泉田の愚痴の聞き役になっていた井上さんも、性格的に言えば、決して気が長いほうではない。生産性のない話を延々と繰り返す泉田に対しついにブチ切れ、あるとき厳しく叱責した。
「純ちゃんよ。お前、いつまでそんな女々しいこと言っとるんや。龍や田上(明=当時のノア社長)をここで悪く言ったところで何も解決せんやろ。“出版社が電話に出ない”って、向こうも仕事なんやから、お前の迷惑電話にいちいち付き合ってるほど暇じゃないねん。とにかくあいつが悪い、こいつがひどいとあちこち言いふらすな! もう切るで!」