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格闘技PRESSBACK NUMBER
三沢光晴夫人ら被害は「1億円超」…プロレスリング・ノアを襲った“巨額詐欺事件”の手口は? 急逝「昭和プロレスの語り部」が明かした“ノア崩壊”ウラ話
text by
欠端大林Hiroki Kakehata
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/12/04 11:16
故・三沢光晴が立ち上げた「プロレスリング・ノア」を震撼させた巨額詐欺事件。11月に急逝したマイティ井上が明かしていたウラ話とは?
N夫人の必殺技は「口座凍結詐欺」だった。
「恥ずかしい話だけど私、相続税を滞納しちゃったのね。私の資産20億円が入っている口座が、国税の奴らに凍結されちゃったのよ。イズさん、お願い。たった1週間でいいから4000万円、貸してくれない? 口座が解除されたら即時、4000万円はお返ししたうえで、イズさんには小田原のレストランから毎月70万円のお給料を払います」
当時の泉田は、リストラ通告によって心のなかに霧が立ち込めている状態だった。結婚願望があるにもかかわらず、明るい未来はまったく見えない。そこで今後の生活の保障をしてくれると約束したN夫人の虚言を愚かにも信じ、預貯金や親類からの借金、株や愛車ハリアーまで売却、4000万円を工面して送金してしまった。
ところが1週間後、N夫人から返ってきた言葉は意外なものだった。
「イズさん、お金の件だけど国税があと4000万円、必要だっていうの。そのお金がないと、もう最初の4000万円は返せないかも……」
泉田が詐欺師にだまし取られた額…8000万円超
この手の詐欺事件ではセオリーとなっている「おかわり攻撃」を受けた泉田は焦燥感に駆られ、別のスポンサーに頼み込んで何とかカネを借り、さらに4000万円超をN夫人に送金してしまう。無論、20億円が眠っているというN夫人の口座が「凍結解除」されることもなく、仕事もない泉田はたちまち極貧生活に陥った。
このとき泉田が窮状を訴えた相手が井上さんである。当時の泉田は、そのクセ強な性格もあってノア内部に親しい選手もいなかったが、泉田の話を聞いた井上さんは、フロント組でN夫妻ともっとも親密な関係にあった仲田龍GM(故人)を猛批判した。
「選手をリストラしてだ。その選手が詐欺に引っかかって困ってるっちゅうのに、(仲田)龍や若い選手らはいまでもヤクザ夫婦とどんちゃん騒ぎしとるやないか。あいつら純ちゃん(泉田)のカネで飲み食いしてるようなもんだぞ。詐欺師以上の大悪党やないか!」