「違いますね。投げさせてもらえることに感謝していますし、自分としてはそういう思いに無意識でなれるようにしたいんです。どんな場面でも投げたいですし、そこでやっぱり感謝の気持ちを忘れてはいけないし、それがなくなったら僕は終わりです。僕は本当に野球を辞めようと思っていたので、ファンの方々や家族、友人たち、お世話になった方々から応援されるのって、普通のことや当たり前じゃないって思っているので、本当今年1年、何度も言いますけど感謝の気持ちが大きかった。苦しいときに支えてくれた人たちに少しは恩返しできたのかなって思っています」

この1年は「刺激がすごかったです」

　プロになって初めて経験した、ギリギリの戦い。中川は感慨深い表情で改めて言うのだ。

「刺激がすごかったですけど、でも本当、これがプロ野球だなって思いました」

　晴れてプロ野球の選手になれたと強く実感することのできた1年間だった。

　そして来季、目標を訊くと、返って来たのは、案の定の中川節だった。

「僕は欲を出したら駄目なので、とにかく謙虚に。どんな場面でも投げたいですし、与えられた仕事をまっとうして、まずはリーグ優勝に貢献すること。具体的な数字とかはあえて挙げずに、自分にできること、その準備に集中して、初心を忘れずにってことですね」

ビールかけは「天国みたいだった」

　冬の高い空のように澄み切った目。ただただ自分の役割を果たしたいと真摯に願う、中川がそこにはいた。路頭に迷いそうだった自分に居場所を与えてくれたベイスターズに恩返しがしたい。感謝を忘れぬ美しきアンダースローは、来季もきっと獅子奮迅の活躍を見せてくれることだろう。

　最後に「ビールかけ最高でしたか？」と尋ねると、ハマのサブマリンは破顔一笑して答えた。

「ええ、最高でしたよ。あの瞬間だけ、何て言うんだろう、上下関係とか関係なく、本当にみんなで喜びを分かち合える場所でした。もう、天国みたいな感じでしたよ」

　縁あって戻ってきた地元横浜は、天国に一番近い場所だったようだ。再びそんな天空を舞うために、来季も中川の戦いはつづく。

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1年前は「野球を辞めようと」DeNA中川颯の“人間万事塞翁が馬”…「スタンドがキラキラしていた」初勝利→日本一「こんないい年になるなんて」