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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
1年前は「野球を辞めようと」DeNA中川颯の“人間万事塞翁が馬”…「スタンドがキラキラしていた」初勝利→日本一「こんないい年になるなんて」
posted2024/12/02 11:02
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Naoya Sanuki
野球をプレーする喜びを享受した1年間。横浜DeNAベイスターズの中川颯は、まるで陽だまりの中にいるように穏やかで、柔和な表情で言うのだ。
「まさか、こんないい年になるとは思っていませんでした。本当に」
1年前には野球を辞めようと考えていた
深く、実感のこもった口調。わずか1年前は所属していたオリックス・バファローズを自由契約となり、大好きな野球を辞めようとまで考えていた。それがどうだ、今は幼いときから愛着のあった地元ベイスターズでプレーをし、仲間たちとこれ以上ない歓喜を味わった。
「すべてが満足いく結果ではなかったですけど、日本一に少しは貢献できたのかなって。そこは本当に頑張ってきてよかったと思っています」
クライマックスシリーズ(CS)では3試合に登板し2ホールドを挙げると、日本シリーズでも3試合を投げ、無失点と完璧に自分の仕事をこなした“ハマのサブマリン”。戦力の一人として、日本シリーズ制覇をして見えた風景はどのようなものだったのだろうか。そう問うと中川は、しばらく頭の中で考えを反芻し、ゆっくりと口を開いた。
苦しい気持ちも痛いほどわかる
「何だろうな。いろんな思いがあったんですよ。もちろん日本一のメンバーになれたことは嬉しかったけど、一方でメンバーになれなかった仲間の気持ちとか痛いほどわかるので、絶対素直に喜べているわけじゃないんです」
表情に少し影が宿った。思えば、ルーキーイヤーから3年間過ごしたオリックスでは、厚い選手層に阻まれ、またチャンスにも恵まれず、塗炭の苦しみを味わうような日陰での生活がつづいていた。その間、チームはリーグ3連覇や日本シリーズ制覇など黄金時代を築いていたが、中川は蚊帳の外にいた。