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1年前は「野球を辞めようと」DeNA中川颯の“人間万事塞翁が馬”…「スタンドがキラキラしていた」初勝利→日本一「こんないい年になるなんて」 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byNaoya Sanuki

posted2024/12/02 11:02

1年前は「野球を辞めようと」DeNA中川颯の“人間万事塞翁が馬”…「スタンドがキラキラしていた」初勝利→日本一「こんないい年になるなんて」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

日本シリーズ第5戦、9回に登板して力投する中川

「だからこそ、その人たちの分までってわけじゃないけど、そういう思いを知っていたからこそ頑張れたっていうのもありますし、そうですね……また来年も、もちろん今年と同じ場所を目指してやっていきたいですし、自分が来年そのポジションにいられるかはわからない。そういったこともいろいろ考えてしまって、何か不思議な気持ちなんですよ」

人間万事塞翁が馬

 たしかに若干、支離滅裂といった感じだが、これが中川の嘘偽りのない心情なのだろう。26歳にして、心がバグるほどの強烈なコントラストを描く光と影を味わった。この現状が乱高下するような経験は、きっと今後の大きな糧になるはずだ。

「本当にそうですね。一昨年、大学の監督と食事に行ったとき『人間万事塞翁が馬』という言葉を教えてもらったんです。本当にそんな感じだなって」

 不運に思えるようなことが、実は幸運に繋がったり、またその逆もしかり。不運と幸運は容易に判断がつかず、その事象において一喜一憂することはないという言葉だ。

喜びの次には必ず自戒の言葉が出る

「かつての経験があったからこそ、すごく達成感があったし、嬉しかったんです。また壁にぶつかるかもしれないけど、そういう経験を繰り返すことで、強くなっている実感もあります。しっかり自分と素直に向き合って一生懸命やっていれば、見ていてくれる人は必ずいるので、これからもごまかすことなく自分に正直にやっていきたいです」

 穏やかだが決意を感じられる口調。喜びを表す一方、必ず戒めの言葉を口にする。これが中川の人間性であり、ゆえに報われてよかったと思わずにはいられない。

【次ページ】 手痛い洗礼を受けた先発の経験

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