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田中将大36歳「年俸9億円」から4年…大減俸で楽天退団も「じつはパ5位の好成績」“シブい働き”とは? 1歳下の菅野智之も限界説を覆したからこそ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/28 17:01
杜の都・仙台を離れることになった田中将大。2024年こそ1登板に終わったものの、21~23年の3シーズンで残した好成績とは
2013年は、田中が投げた試合では味方打線が大量点を取ることが多かったのに対して、復帰後の楽天では、打線の援護に恵まれなかったのは事実である。
よく、味方の援護がない投手は投球のリズムが悪いからだ――などと言われるが、巡りあわせが悪かったのだと思う。
なにより田中自身は3年とも規定投球回数前後のイニング数を投げて、救援投手の負荷を軽減している。全盛期のような投球はできなかったにしても、先発投手の責任は果たしていたと言える。
21~23年の3年間で投げた458回は、パ・リーグではオリックスの山本由伸(550.2回)、西武の髙橋光成(504.1回)、日本ハムの上沢直之(482.1回)、加藤貴之(461回)に次いで5位の成績だった。
楽天の投手では最も多く(則本昂大が424.2回)、283.2回だったロッテの佐々木朗希などと比較しても、多くのイニング数を消化したのは事実として残る。もちろん9億円の年俸が釣り合っているかどうかは別の話ではあるが――。
田中は2023年オフに「右肘関節鏡視下クリーニング術」を受けて、2024年はリハビリ途上だった。今季は1試合に投げて1敗に終わったが、11月1日に36歳になったベテラン投手のリハビリが遅れるのは、ある程度仕方がないところではあろう。
「もう期待はされていないんだな」
田中はNPBに復帰してからの3シーズン「活躍できなかった」と言われることを不本意に思っているのではないかと思う。チームの誰よりも多くのイニングを投げてローテの中核を担い、「マー君登板」の試合には多くのお客が集まった。勝ち星こそ量産できなかったが、彼は十分に仕事をしたといえるのではないか。
ましてや田中将大は2013年、チーム唯一の優勝、日本一の最大の立役者、レジェンドなのだ。それを考えても、今回の退団につながった球団の年俸提示を田中は寂しい思いで受け止めたのではないか。
〈(球団の提示を受けて)個人的に受けた印象としては、もう期待はされていないんだなと思った〉
退団が決定した後の囲み取材でこう語ったと報じられているが、この言葉に今の心情がにじみ出ている。
200勝まであと3勝…1歳下の菅野も今季復活したからこそ
〈日米通算での勝利数5傑〉
ダルビッシュ有203勝(NPB93勝 MLB110勝)
黒田博樹203勝(NPB124勝 MLB79勝)
野茂英雄201勝(NPB78勝 MLB123勝)
田中将大197勝(NPB119勝 MLB78勝)
石井一久182勝(NPB143勝 MLB39勝)
田中は日米通算で4人目の200勝を目前にしている。NPB単独ではヤクルトの石川雅規が186勝で迫っているが、田中将大が次の200勝投手になる可能性が高い。すでにヤクルトが獲得に向けて調査をしているとの報道もある。田中が個人的な数字を現役続行の理由にすることはないだろうが、それでも200勝の大台はクリアしてほしいと思う。
今オフ、海外FA権を行使してのMLB挑戦を表明した巨人の菅野智之は、田中の1学年下の35歳だ。彼も一昨年には「もう限界か」と言われたが、今年、最多勝、MVPをとる活躍をして、勇躍未知のリーグで、勝負しようとしているのだ。
田中将大にもまだ可能性はあると思う。どのチームに行くかはわからないが、円熟味ある投球でさらに我々を楽しませてほしいと思う。
〈プロ野球ストーブリーグ特集:つづく〉