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田中将大36歳「年俸9億円」から4年…大減俸で楽天退団も「じつはパ5位の好成績」“シブい働き”とは? 1歳下の菅野智之も限界説を覆したからこそ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/28 17:01
杜の都・仙台を離れることになった田中将大。2024年こそ1登板に終わったものの、21~23年の3シーズンで残した好成績とは
普通なら即トミー・ジョン手術というところだが、田中は自身の多血小板血漿(PRP)を患部に投与し、断裂した靱帯の再生を促すPRP療法を選択した。
幸いなことに、田中の靱帯はPRP療法で修復され、9月には復帰した。翌年以降も、田中はヤンキースの先発投手陣を支え続ける。MLBでの田中は「絶対的なエース」ではなくCCサバシアやルイス・セベリーノなどとともに、ローテーションを維持して「試合を作る」タイプになった。
楽天復帰後2ケタ勝利を挙げられなかったが
NPB時代は、ここぞというところではギアを上げて155km/h超のフォーシームを投げ込んだが、次第にスライダー主体の技巧派へと変貌していった。
2020年、新型コロナ禍でMLBのペナントレースが60試合に短縮された。田中はローテーションをおおむね維持したがオフにFAとなり、楽天に復帰した。ただ復帰して4年、田中は一度も古巣で2ケタ勝利を挙げることができなかった。
それもあってNPB選手最高年俸の9億円も、2022年には4.75億円、23年には2.6億円(いずれも+出来高、推定)と減額された。
この数字だけを見ると「復帰後の田中は期待に応えることができず、年俸も急落した」ということになってしまうが――数字を仔細に見ると、少なくとも昨年までの3年、田中は楽天投手陣にあってローテーションを維持し、ベテランらしい働きをしていた。
ではなぜ、勝ち星を挙げられなかったのか?
2021年から3年間の田中の成績、失点(1試合当たりの平均失点)と、田中の登板時の味方の援護点(平均援護点)を比べると以下のようになる。
2021年 23試合4勝9敗155.2回 率3.01
失点54(2.35)援護点40(1.74)
2022年 25試合9勝12敗163回 率3.31
失点65(2.60)援護点74(2.96)
2023年 24試合7勝11敗139.1回 率4.91
失点79(3.29)援護点52(2.17)
ちなみに2013年はこうだった。
2013年 28試合24勝0敗212回 率1.27
失点35(1.25)援護点150(5.36)
21~23年で「じつはパ5位」の好成績とは
2013年、空前の成績を挙げた時には、田中はめったに失点しない投手ではあったが、同時に味方の援護点は、田中の失点の4倍以上もあった。
しかし2021年、23年は田中の失点よりも援護点の方が少なかった。また2022年もわずか9点多いだけだった。