──素敵なエピソードじゃないですか。

植草　お洒落をすることで内面も変わりますから。彼の前だけじゃなく、まわりからも「今日もかわいい」と言ってもらいたかった。結局、彼とは大学2年で別れてしまったけど、お洒落でいたい気持ちは変わりませんでした。

──空手をやっている女性はひたすら競技に打ち込むタイプも多いので、大学時代から植草さんは目立っていました。

植草　「化粧＝雑念」ととらえていた選手もいたと思います。自分の場合は、雑念ではなく息抜きであり、メリハリ。試合が近いと遠出もできないので、完全オフの日にはそういう時間を作っていました。

現役時代の植草歩（2019年撮影）©Takuya Sugiyama

「全然きゃりーに似てねえじゃん」「私もそう思う」

──東京オリンピックに向け、空手のPR大使のような立場になったときには“空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ”というニックネームをつけられていましたね。ああいうふうに呼ばれて、本心ではどう思っていましたか？

植草　エゴサーチをしたら、「植草って誰だよ？　全然きゃりーに似てねえじゃん」というコメントが目に入ってきました。イヤだったけど、そういうキャッチフレーズを通して、植草歩や空手に触れてくれる人がいるかもしれない。それほどひどい誹謗中傷でもなかったので、「そうだよね。私も似てると思ってないもん」くらいに受け止めるようにしていました（笑）。

“空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ”と呼ばれた現役時代（2019年）©Takuya Sugiyama

──あのニックネームは誰がつけたんでしょう？

植草　この間、引退会見を開いたとき、ある通信社の記者の方が「自分が最初に書いた」と打ち明けてくれました。当時はきゃりーぱみゅぱみゅさんが旬でしたし、同い年だし、同じような髪形をしていたのでそういうふうに名付けたんでしょうね。

──決め手はヘアースタイルだったんですね。

植草　そうですね。いまはどのスポーツも男子の坊主頭や女子のショートカット強制は廃止になっていると思いますけど、私が学生のころは、女子はまだ「ショートカットが正しい」とされている時代でした。もしあのままショートでいなさいと言われていたら、空手は続けていなかったかもしれません。

──高校だけではなく、大学も服装や化粧に関しては厳しかった？

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