オリンピックPRESSBACK NUMBER
空手世界王者が“プラスサイズモデル”に…いったいなぜ? 植草歩32歳が語った“意外な理由”「体重やスリーサイズが出るのは恥ずかしいけど…」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byTakashi Shimizu
posted2024/11/30 11:02
今年、現役引退を発表した空手の植草歩(32歳)。注目を集めた「プラスサイズモデル挑戦」の理由とは
──そういう気持ちになったら潮時ですね。
植草 決定打は日本代表の合宿の日が、自分が指導する日体大柏高空手部の生徒たちの大会と重なったとき。そこで迷うことなく「生徒たちを優先したい」という気持ちになったんですよね。会見では引退理由として「モチベーションがなくなった」と説明したけど、詳しく話すとそんな感じです。
東京五輪がなければ「教師になっていたと思う」
──植草選手はタイミング的に「一番いい時期」に現役生活を送ることができた空手選手のひとりだと思います。以前なら現役を続けたくても、大学卒業後に引退するパターンが大半だった。しかし2016年、東京五輪で空手が五輪競技に採用されることが決定し、一気に道が開けました。
植草 本当にラッキーでしたし、スポーツバブルに乗った感じはありました。小学校高学年のときの千葉県のジュニア強化で、私は(最高位の)ターゲットAだった。千葉国体があったのも高校3年生のとき。大学1年生になっていたら強化のターゲットにならないし、高2よりも高3の方が強いじゃないですか。オリンピックもそうですし、運の巡り合わせが良かったのかなと思いますね。
──もしオリンピアンになっていなかったら、何をやっていたと思いますか。
植草 東京五輪がなかったら……。自分はインターハイで優勝できず、指導者として生徒をインターハイで優勝させたくて教員免許をとったので、教員の道を進んでいたと思います。いまも中高の保健体育の免許は持っています。
──日体大柏高では教師をやりながら空手部の監督をやっているのですか?
植草 いえ、肩書は外部コーチです。その方がモデルやメディアの仕事にも臨機応変に対応できるので。もちろん生徒の大事な試合と他の仕事がバッティングしないようにしていますけど、この働き方がいまの自分のライフスタイルには合っていると思います。
──言葉の端々から充実感が伝わってきます。
植草 今までは自分のための練習をしないことに罪悪感があって、「今日は生徒の指導ばかりで終わってしまった……」と悔やむこともあったけど、現役を引退して指導をメインで考えられるようになったことが精神的にプラスに作用していますね。「練習に行きたくない」とも思わなくなりました(笑)。