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一度は競技引退も…結婚→出産→ラグビー転向を経て陸上・寺田明日香(34歳)はなぜ「全盛期の自分」を超えられた?「支えてくれる家族がいたので」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by(L)本人提供、(R)JMPA
posted2024/11/22 11:03
23歳で陸上競技引退→結婚・出産からラグビー挑戦を経ての陸上復帰。なぜ寺田明日香は「かつての自分」を超えることができたのか
自信を持てないままラグビーを続けるのか、それとも潔く終止符を打つのか。悩んだ末、浮かんだのは「ふたたび走る」という選択肢だった。
「ラグビーをやっていて、やっぱり一番楽しかったのはボールを持って走ることだったんです。一度は嫌いになった“走る”をまた好きになれたなら、それを極めたほうがいいんじゃないかと考えるようになって。
当時お世話になっていた方にちょこちょこ相談してみたら『いいじゃん、やりたいことやったほうがいいよ』って後押ししてくれて。あ、意外にみんなポジティブに考えてくれるんだと思ったら、すごく気持ちが軽くなったんですよね」
かつての恩師と雪解け…ラグビーでの成長も実感
そして、寺田は陸上復帰の意思を固めるべく、地元の北海道に向かった。陸上時代、仲違いをして別れた恩師との再会を果たすためだった。
「正直、先生と気まずい別れ方をしている時点で陸上に戻るのは難しいと思っていたんですよね。でも、私がラグビーに転向したのも知っていて、色々と気にしてくれていたんだなあと気づいて。先生に『陸上に戻るって言ったらどう思いますか?』と切り出したら、『お前、いくつになった?』って聞かれたんです。『もうすぐ29歳です』と伝えると、『30歳前ならまあまあいけるかもな』と。背中を押してもらえたし、1回目の現役時代のわだかまりを解消できたんですよね」
そして、母校の陸上部員たちと一緒に走り、ラグビーを経たからこその成長にも気づいた。
「全国大会に出るような高校生たちとすぐに遜色なく走れたんです。全然走れなくて辞めたはずなのに、『ラグビーのおかげで脚、速くなってるじゃん!』って」
ラグビーは陸上競技にはない“止まる”動きや相手に合わせて前後左右に移動することが求められる。
「どこに重心を置けばいいのか、身体のどの部分を意識すればいいのか、いろいろなアプローチを重ねた結果、身体の使い方が上手になったのかなと。『ここを意識すればこう動かせる』というのが言語化できるようになったのが、引退前より走れるようになった要因なのかなと思います」
恩師との和解、陸上への手応え。トラックに戻る覚悟が決まった。