酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ソフトバンク育成2位のち中日→戦力外でトライアウトから5年…地元で社会人監督「僕が悪ければ選手に謝ります」“独立Lの星”亀澤恭平36歳の今
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/11/13 11:02
ソフトバンク、中日に所属した亀澤恭平。35歳の今、社会人野球の監督になった経緯とは
「やめてからいろんな道を模索しました。いろいろなオファーもいただいたんですが……やはり決め手となったのは『地元から必要とされている』ということでした」
ショウワコーポレーション硬式野球部は、1994年、岡山県美作市に地域のクラブチームとして誕生。1997年には全日本クラブ選手権でベスト8に進むなど急成長し、人材派遣・業務請負会社「ショウワコーポレーション」の支援を受けて、クラブチームの強豪として注目されている。岡山出身の亀澤監督になってからは、2023年全日本クラブ野球選手権にて初優勝を果たし、社会人野球日本選手権大会にも出場している。
「僕が監督に就任してからは、都市対抗出場、クラブ選手権日本一と、プロ野球選手の輩出を3つの目標にしています」
亀澤はこのように語る。
みんなの前で大きな声を上げずに
チームには「プロ枠」で、髙田萌生(元巨人、楽天)、引地秀一郎(元楽天)、福森耀真(元楽天)が選手として在籍している。
「基本的な指導は、選手の引き出しを増やすことに特化していて、特にこれをやれとは言っていません。ただ、うちはトップアスリートの子たちが集まっているわけではなく、基本を知らない子も多いから、まず基本を教えて、そこから枝わかれしていく指導をしています。同時に、自主性に重きを置いているので、全体練習はすごく短いんです。練習を見ていて気になった選手に声をかけます。みんなの前で大きい声を上げずに、一対一の対話の中で成長を促すような感じですね」
取材日は雨天のため、室内練習場での練習だったが、亀澤監督は選手の横に立ち、一言二言話しかけるだけだ。あとはじっくりその動きを見ている。選手と信頼関係ができているように感じる。
「基本的に野手も投手も見ていますが、野手は“普通のゴロを普通に捕って、投げてアウトにする”ことを重視しています。投手には『練習でやっていることしか、ゲームでは出せない』と言っています。練習で本気が出せない投手は、ゲームには出さない、と常に言っています。投手は『プロ枠』の選手を獲得しているので、どうしても彼らを優先することになりますが、彼ら3人がしっかり投げれば、他の選手もついてくると思いますね」
データ野球に積極的になったワケ
指導法とともにこのチームで特筆すべきは、社会人の新興チームでありながら弾道測定器「トラックマン」を採用するなど、データ野球に積極的な点である。