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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト“史上最多”6人指名の富士大「唯一の指名漏れ」選手のもとに訪れたのは? 指名選手だけじゃない…2024年《運命のドラフト会議》その後の物語
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/05 06:01
今年も様々なドラマを生んだプロ野球のドラフト会議。「運命の一日」を終えた後の関係者たちのその後は…?
「よかったです。とりあえず、今日が何ごともなくて。前はいましたから、指名されてからケガしたのが。でも、『加減してやれ』とも言えないし。明日もありますから、もう1日、しっかり見届けて……」
即戦力左腕・佐藤柳之介、屈強・頑健なスラッガー・渡邉悠斗。2人を指名して担当になった広島の近藤芳久スカウトも、「やれやれ」である。
その渡邉選手には、ご家族もやって来ていた。スポーツマンのお父さん、控えめなお母さんに、かわいい妹さん。
福島のいわきなど、まだ近いほうだ。リーグ戦が岩手や青森の球場の時でも、はるばる福生(東京都)から、車を飛ばしていらっしゃっていた。家族ぐるみの「指名獲得」である。
「ありがとうございました。ありがとうございました。おかげさまで指名されて……もう、本当にありがとうございました!」
家族念願のドラフト指名、プロ野球入りに、ほかに言葉もないだろう。
唯一、指名が叶わなかった選手の下に訪れたのは…?
7選手がプロ志望届を提出して、6選手が指名された富士大。惜しくも指名が叶わなかった佐々木大輔内野手(一関学院高)にも、内定している社会人チームの関係者が激励に訪れていた。
唯一、指名を得られなかったショックは小さくはなかったはずだが、なにか、すべてふっ切れた……いや、ふっ切ったような晴れ晴れとした笑顔で、激励の言葉をもらっている。
この秋は、足のケガで存分に実力を発揮しきれなかった佐々木内野手だが、背中を叩くほどのフルスイングからの長打力と、三遊間深い位置からも低いダイレクト送球を一塁手に送れる鉄砲肩は一級品だ。東海地区の強豪社会人でさらにもまれなから、2年後にはスカウトたちの出待ちを受ける立場になれるはずだ。
そして、その翌日。高校野球・関東大会の保土ケ谷球場(横浜市)。
第1試合が東海大相模高VS山梨学院高だから、ただでさえ熱心な高校野球ファンが、早朝からたくさん詰めかけて、試合開始早々、なかなか開けない外野席が開放された。
そして、そこにはプロ野球スカウトたちも、大勢やって来ていた。
<次回へつづく>