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陸上女子トラック「最古の日本記録」はなぜ16年も破られない?…400mで“歴代10傑独占”「ロングスプリント界の至宝」千葉麻美とは何者だったのか
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byAFLO
posted2024/11/07 11:00
陸上女子400mでいまも残る日本記録保持者の千葉麻美。日本歴代記録の上位10傑を独占する、不世出のロングスプリンターはいかにして生まれたのか
技術走は、春先は1週間に1~2日は行った。シーズンインしてからも、2週間に1回ぐらいは組まれていたという。
もともと天賦の才が備わっていたとはいえ、ガムシャラな練習だけでなく、こうして基礎から走りを作り直すことによって、千葉はさらなる進化を遂げることになる。
大学の指導で急成長…1年時から日本記録を更新
大学生になってわずか2カ月後の2004年6月、マレーシアで開催されたアジア・ジュニア選手権で、千葉はいきなり52秒88の日本新記録を樹立し、銀メダルを獲得した。
「大学に入って技術走をやってからどんどんタイムが良くなりました。走れている時と走れていない時との感覚の違いが少しずつ分かってきた頃に出せた日本記録でした」
こう話すように、大学での新たな取り組みをさっそく快挙に結びつけた。
だが、高校生の頃には「次元が違う」と思っていた従来の日本記録をわずか1年で更新したにもかかわらず、当時はあまり実感が湧かなかったという。
「中国の選手がちょっと前を走ってくれて、それにずっと付いていったので、引っ張ってもらって出た日本記録でした。自分でも出せると全く思っていなかったので、ゴールして電光掲示板を見てびっくりしたぐらいです。
それよりも、同じ年代に自分より先にゴールした選手がいたので、日本記録が出てうれしかったんですけど、優勝できなかったことのほうが悔しかった。だから、あんまり実感がなかったんだと思うんです。“上には上がたくさんいる。日本の女子短距離はまずアジアで勝てないと、世界で勝てるわけがないよな”と18歳で思えたのが、その先につながったと思います」
日本記録を樹立したうれしさよりも、世界での立ち位置を思い知らされたことのほうが、千葉にとっては実感が大きかった。
<次回へつづく>