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「え、パナソニック辞めるの?」SVリーグ異例の移籍“セッター入れ替え”…34歳深津英臣がついに本音「しがみついてでもバレーボール選手で」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/10/29 11:02
12シーズン在籍したパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)を離れたセッター深津英臣。福澤達哉(右)ら日本代表選手たちと一時代を築いた。写真=2017年天皇杯、サンタ帽子をかぶって優勝を喜ぶ深津
パナソニックパンサーズのチーム名で戦う最後の大会となった黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会を終えた6月3日、深津の退団が発表された。企業が有するチームとして、会社に属する選手たちが戦うのがスタンダードとされてきたVリーグから、プロ化を視野に世界最高峰リーグを目指すSVリーグでは外国籍選手の枠も増え、チーム内でのポジション争いも激化する。プロ選手が増え、出場機会や好条件を求めれば移籍も活発になるのが当然の流れ。
加わる選手がいれば、出て行く選手もいる。これまでを見ればどれほどの功労者であろうと、深津も例外ではなかった。
だが決断した理由は決してネガティブなものではなかった、と深津が明かす。
「僕もずっと、パンサーズにいて、引退したらいずれは指導者で、と考えていました。だけど頭のどこかには(出身地の)愛知でやりたい、という思いもあったんです。でも昨シーズン、(パナソニックで)あれだけのメンツ、日本代表、アメリカ代表が揃っているのに優勝できなかった。来年こそは、という思いもありましたけど、自分の中で環境を変えたほうがいいのかもしれない、とも思った。今年は移籍する選手が多いというのも聞いていたので、いろんなタイミングが重なって、パナソニックを辞めて、プロになって移籍リストに載った時、ウルフドッグスから声をかけていただいたので、(移籍を)決断しました」
むしろ深津は、この機を「これからにつながるチャンス」と捉えていた。
兄弟対決で話題を集めた開幕戦
セッターというポジション柄、試合の状況や自身の調子次第で感情を露わにすることはない。クールにプレーするイメージが強いセッターの中でも、深津はいい意味で常にギラギラした選手だ。
どれほど経験を重ねようと常にがむしゃらに、どんな選手にも負けない、とむき出しにする。名古屋での新シーズンの開幕戦では、三兄弟の長兄で、パリ五輪にも出場したセッターの旭弘が在籍する東京グレートベアーズと対戦し、連勝スタートを切った。
翌週は移籍後初めてホームアリーナ、エントリオに登場。かつてパナソニックや日本代表で共にプレーし、今も「めちゃくちゃうまい」と絶賛する後輩セッター関田誠大(30歳)を擁するジェイテクトSTINGS愛知と対戦した。両サイドへの伸びのあるトスと、ミドル、バックアタックとセンター線を活かしたトスワークで接戦を繰り広げた。
試合直後は敗戦に悔しさを滲ませながらも、記者会見で発した言葉は実に深津らしかった。