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「え、パナソニック辞めるの?」SVリーグ異例の移籍“セッター入れ替え”…34歳深津英臣がついに本音「しがみついてでもバレーボール選手で」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/10/29 11:02
12シーズン在籍したパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)を離れたセッター深津英臣。福澤達哉(右)ら日本代表選手たちと一時代を築いた。写真=2017年天皇杯、サンタ帽子をかぶって優勝を喜ぶ深津
「勝ちたい。だからもっとうまくなりたい。もっといいコンビをつくりたい。シンプルです。このチームでは1年目ですけど遠慮することなく若い選手にもどんどん聞きに行きたいし、若い選手も遠慮せず聞いてきてくれている。監督も昨日より今日、今日より明日がよりよくなるように、と話してくれるので、その思い、火を消してはいけないと思うし、いいところをもっと伸ばして、悪いところを修正できるように。しっかり練習したいです」
Vリーグの門を叩いた頃は、これほど長くバレーボール選手であり続ける未来があるとは考えもしなかった。深津はそう言う。
「そもそも僕が(パナソニックに)入った頃は30歳過ぎた選手なんてほぼいなくて、いたとしたら大ベテラン。これだけ長くやる、やれるという考え自体がなかったかもしれない。でも今は、できるならどこまででも選手でありたいと思っているし、しがみついてでもできる限りバレーボール選手であり続けたいです」
やるからには、目指す場所もある。2019年以来遠ざかっている日本代表だ。
「行きたいですよね。オリンピックに出られなくても、僕の中ではずっと日本代表は目指す場所だし、選手である以上はこれからも変わらないです」
34歳でも消えない代表復帰への想い
エリート街道を歩んできた深津だが、日本代表ではなかなか結果に恵まれず、悔しさを味わった。「勝たなきゃいけない」と焦れば焦るほど、少しでもコンビが合わなかったり、満足いくトスができなければ自分の悪いところばかりに目が向いた。「バレーボールは大好きだけど“楽しい”と感じながら戦える余裕はなかった」と振り返るのも、決して誇張ではない。
日本代表から落選し、一時は「代表戦を見るのも嫌な時期もあった」と振り返るが、他人と比べて自分が「できない」ことばかりを見るのではなく、できることを増やす喜びに考え方を変えたら、余裕も生まれた。
これから外国籍選手の枠がさらに増えるだろうSVリーグの未来を語る口調も、期待で満ちていた。
「今はアウトサイドやオポジット(の選手が多い)ですけど、外国籍選手枠が3人に広がれば、セッターの選手がやってくる時代はすぐ来る。ブルーノ(ブラジル代表のブルーノ・レゼンデ)や(アルゼンチン代表のルチアーノ・)デ・セッコ、ビッグネームもバンバン来るかもしれないし、そうなったらどんなリーグになるんだろう、って思いますよね」
若い頃なら「試合に出られなくなるかもしれない」と不安を抱いたかもしれない。だが今は違う。自分を信じる、まさに文字通りの「自信」がある。
「どれだけすごい選手が来ても、そこで勝負に勝てばいいわけですから。ブルーノが来たら話題になるでしょうけど、もしも同じチームでプレーすることになったら、ブルーノを控えに回すぐらい、僕はやってやりますよ(笑)」