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「ちょっと待てよ…こんなに簡単に勝てるはずがない」男子バレー日本代表<関田誠大、山本智大、西田有志が語る>パリ五輪・イタリア戦の真相
posted2024/10/30 11:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Getty Images / Kaoru Watanabe(JMPA)/ Asami Enomoto(JMPA)
発売中のNumber1106号に掲載の[パリ五輪ドキュメント]「『交錯』エースに託した1点 関田誠大/山本智大/西田有志」より、内容を一部抜粋してお届けします。
「こんなに簡単に勝てるはずがない」
これ、行けるぞ。
冷静沈着な関田誠大も思わず感情が昂った。
イタリアから2セットを連取し、第3セットも22-21。日本が1点を抜け出した。前衛にいた関田はワンポイント投入の宮浦健人に代わってベンチへ。石川祐希の連続得点で24-21とマッチポイントを握ったところでコートに右膝をついた。勝利したら真っ先に駆け出すためだった。
だが次の瞬間、我に返った。
「ちょっと待てよ、と思って。そもそも相手はあのイタリアで、こんなに簡単に勝てるはずがない。このままブレイクが取れるわけがないから次のプレーが終わったら出る準備をしておこう、と思い返しました」
土壇場でイタリアに追いつかれ…
関田の予想は的中する。イタリアに1点を返され、続く得点も石川とリベロの山本智大の間に放たれたシモーネ・ジャンネッリのサーブで崩された。石川のスパイクがアウトになり24-23。日本はワンタッチの有無を確認するチャレンジを要求。その間、コートで石川と山本は直前のジャンネッリのサーブを振り返って、次はどう対応するかを短い時間で確認し合った。
「今のどうだった?」
山本の問いに石川が即答した。
「俺行けるわ」
続く2本目も2人の間、山本は取りに行こうと動いたが、同じ瞬間に石川の膝が半歩前に出たのが見えた。直前のやり取りも頭をよぎり、邪魔しないように身体を引いたが、石川の意識は次の攻撃に向いていたためボールは2人の間に落ちた。
24-24。
土壇場でイタリアに追いつかれた。
リベロとして、山本はその判断を悔やむ。
「たぶん祐希にも僕の身体が動くのが見えたんです。ミスしたら終わりの場面で2本続けてあのサーブが打てるのがまずすごいんですけど、取りに行かずにサービスエースをとられたことが一番悔しかったです」
25点目は西田有志のスパイクが、アレサンドロ・ミキエレットのブロックに阻まれた。「1点ずつ」と言い聞かせながらも気負っていた。西田はそう振り返る。
「ミキエレットは左肩からグッと、前に出してくる。無理にストレート側を狙っても止められるので(隣で跳ぶミドルブロッカーの)ルッソとの間に打ったつもりが、ミキエレットの右手に止められた。結果論ですけどね。決めなきゃ、と勝ち急ぎました」
結局、このセットは25-27で落とした。
マッチポイントを握りながら、あと1点が取り切れない。フルセットで敗れた予選ラウンド初戦のドイツ戦と同じだった。