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「オオタニの功績は歴史的だが…」アリ、ジョーダンと並ぶには「ケガをしない」こと!? 米准教授が語る“スポーツ史の大谷翔平”…左肩亜脱臼への「決断」は?
text by
谷口輝世子Kiyoko Taniguchi
photograph byGetty Images
posted2024/10/28 17:00
ヤンキースとのワールドシリーズ第2戦の7回、盗塁を試み、二塁に滑り込んだ際に左肩を負傷した大谷
「歴史的なアスリート=長く活躍すること」が不可欠
一方でハドソン准教授の言葉には、大谷が歴史的なアスリートになるためにまだ、やり遂げていないことは「長く活躍する」ことで、そのためにトミー・ジョン手術からの復帰への期待と「選手生命を脅かすけがや身体の不調を避けてほしい」という願いが含まれているように聞こえた。
NFLとメジャーリーグとの二刀流で、ともにオールスターにも選出されたボー・ジャクソンは、アメリカのスポーツ史上、最も優れたアスリートのひとりであることは間違いない。だが、アメフトの試合で大きなけがをした結果、メジャーリーグで8シーズンプレーしただけで引退に追い込まれている。
大谷は今シーズン、手術後のリハビリもありピッチャーとしては登板しなかった。その代わり、今季は脚でも魅せた。ナ・リーグ最多の54本塁打を打ちながら、59盗塁を記録し、メジャー初の50本塁打、50盗塁=「50-50」を成し遂げた。
トミー・ジョン手術は、成功率自体は高い手術ではあるが、リハビリ期間中は辛抱強くあることが求められる。その苦しさのなかでのパフォーマンスである。
野球研究家のジョン・ローゲル氏のオンライン記録によると、2回トミー・ジョン手術を受けた選手はMLBで151人いるという。
大谷のチームメートのウォーカー・ビューラー、ダスティン・メイ、ダニエル・ハドソンも2回の手術を経験している。特にベテラン右腕のダニエル・ハドソンは、トミー・ジョン手術に関して厳しい経験をしている。
ハドソンは、ダイヤモンドバックス時代の2012年7月に最初の手術を受けた。その後、手術から11カ月後の2013年6月にマイナーで術後初のリハビリ登板をしたのだが、この登板で再び肘のじん帯を損傷してしまい、2度目の手術を受けたのだ。
ハドソンは術後のリハビリについてこう振り返る。
「僕の場合は(手術を)2回したというのとは少し違っていた。回復してから再び痛めたわけではないからね。だから自分のけがは、1つのけがとして捉えている。手術と手術の間に(正式に)復帰して投げたわけではない。それでも2年以上プレーできなかったという精神的なハードルは、間違いなく辛いものだった。リハビリはかなりうんざりするプロセスで、当時はそれが一番大変だった」