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「龍一くんもネガティブになるんだ」三浦璃来が悩む木原龍一に伝え続けた“前向きな言葉”…りくりゅうが欠場期間に見つめ合った「新たな一面」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/23 11:00
スケートアメリカで優勝を果たした三浦璃来・木原龍一
日本史上初の快挙から一転…苦しんだ“木原のケガ”
2シーズン前にあたる2022-2023シーズンは、2人にとって輝かしい1年であった。出場したすべての大会で優勝し、世界選手権では日本ペア史上初の金メダルを獲得。フィギュアスケートの全種目を通じて、日本史上初の年間グランドスラム(グランプリファイナル、四大陸選手権、世界選手権のすべてで優勝すること)を達成した。
だが、さらなる飛躍を期した昨シーズンは思いがけないスタートとなった。2023年9月、初戦のオータムクラシックを2位で終えたあと、木原の腰椎分離症発症により、その後の大会は欠場をよぎなくされた。
復帰戦となったのは年が明けた2月の四大陸選手権。5カ月ぶりの試合で2位になると、シーズン3戦目の世界選手権でも2位となり表彰台に上がった。長期間に影響が及んだアクシデントがあったにもかかわらず残した成績は、2人が培ってきた地力を示していた。
むろん、開幕前に描いていたシーズンではなかったろう。でも、ある意味、大きな1年となった。
三浦とコーチは、いかに木原を励ましたか?
シーズンを終えた後、三浦はこう語っている。
「四大陸選手権からの6週間がほんとうにいい練習で、時間を無駄にすることのないこの練習を続けていけば必ず結果が出ると思えました。来シーズンのスタートからずっと続けていけばいい結果が得られると思うので、このシーズンで自分たちにとっていい練習というものを知ることができてよかったです」
得られた収穫は他にもある。
木原はもともと持っている責任感の強さから、怪我したことを申し訳なく思い、三浦やブルーノ・マルコットコーチにしばしば「ごめん」と口にしたという。
「でもブルーノからは『それは迷惑なことじゃないんだ』と励ましていただいて、璃来ちゃんにも全然気にしなくていいと言われました」