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「すごい日本人ガードがいる」天才高校生・河村勇輝はなぜNBAと契約できたのか? 着実な5年間、172cmだからこそ“第一印象”が大事だった 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byUSA TODAY Network/AFLO

posted2024/10/22 11:02

「すごい日本人ガードがいる」天才高校生・河村勇輝はなぜNBAと契約できたのか? 着実な5年間、172cmだからこそ“第一印象”が大事だった<Number Web> photograph by USA TODAY Network/AFLO

NBAメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んだ河村勇輝(23歳)。現地23日の開幕ロースターに名を連ねた

 河村がNBAを現実的な目標と考えるようになったのはわずか1年余前、沖縄で行われたFIBAワールドカップの後だった。まず、日本代表メンバー入りして世界を相手に戦ったことで「世界に通用する選手になりたい」との思いを強くした。そこに、大会中の河村のプレーを見たいくつかのNBAチームからオファーが届いた。突然、憧れの世界が目の前に近づいてきたのだ。

 最初にNBAからのオファーが来たと知らされたときの心境について、河村はこう描写した。

「本当にまさかって感じですよ。こんな僕にチャンスをくれるチームが(あるとは)……。使う、使わないとかじゃなくて、見たいって思ってもらえるようなNBAのチームがあるっていうこと自体が本当に光栄なこと」

 そして、そのことが、夢の世界だったNBAを目標に変えた。

「ワークアウトに来ないかっていう話もあって、それで少しずつ自分の中で現実味を帯びるようになってきて。ワールドカップクラスの選手たちと戦ってみて、僕もこのレベルの選手たちと対等に戦えるようになりたいなっていう(思いもあった)。そのためには、やっぱりそういった選手がゴロゴロいるアメリカに修行しにいかないと成長できない。(成長するかどうかは)どの環境にいても自分次第だとは思うんですけど、本当にレベルの高いところでしのぎを削るっていうことが自身の成長に繋がるんじゃないかなと思ったので」

 とはいえ、このときは結局、渡米してNBAチームのワークアウトやトレーニングキャンプに参加することはしなかった。それには、河村なりの考えがあった。目標としていたパリオリンピックで活躍するための準備をする環境として、日本に残ったほうがいいという判断。さらに、どうせNBAに挑むならしっかり準備をしてから行きたかった。憧れのNBAからの誘いでも舞い上がることはなかったのだ。

「もう1年、日本でやる」冷静で聡明な決断

「まずひとつは、自分の中でオリンピックを目標として大学も中退したっていうのがありましたし、直近ではパリオリンピックに出るっていうのが僕の夢だったので。そのための最善の(方法を選んだ)。それが全ての理由ではないですけど、日本でしっかりと身体を作ったりとか、もう1年日本でやることで、パリオリンピックで最高の自分としてプレーできるんじゃないかなって思って、ああいった決断になりました」

 NBA挑戦という意味でも“第一印象”は大事だ。NBAチームにとって、たとえ国際大会などで何度もスカウティングしている選手であっても、実際にNBAというステージに立ったときにどれだけできるかは未知数だ。最初にNBAの舞台にたったときに力を出せなくても辛抱強く成長を見守ってくれるケースもあるが、河村のようにサイズが小さいというハンディを持つ選手にとっては、第一印象でどれだけ相手の不安を吹き飛ばすことができるかというのは重要だった。

 その点、グリズリーズのキャンプやプレシーズンでの河村は十分に合格点のプレーをした。

【次ページ】 NBAプレーヤーの中でも光る“落ち着き”

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