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「すごい日本人ガードがいる」天才高校生・河村勇輝はなぜNBAと契約できたのか? 着実な5年間、172cmだからこそ“第一印象”が大事だった
posted2024/10/22 11:02
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
USA TODAY Network/AFLO
10月19日、メンフィス・グリズリーズからプレスリリースが届いた。
キャンプ参加のためのエグジビット10契約でグリズリーズのトレーニングキャンプに参加していた河村勇輝が2ウェイ契約に昇格されたというリリースだった。これはグリズリーズと傘下のGリーグチーム、ハッスルの両方に所属しながら、グリズリーズで最大50試合に出場できる契約。実際にグリズリーズの試合に出る機会があれば、日本人4人目のNBA選手の誕生となる。
そんな河村のビッグニュースに、パリオリンピックで日本代表チームメイトだった八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)も喜んだ。
「(渡邊)雄太さん(昨季限りでNBAを離れ、Bリーグの千葉ジェッツに加入)に続いて、こうやって日本人がNBAに出てきたということは、僕としてもすごく嬉しい。彼はガードなので、ポイントガードとして試合を支配できるように。身長のこと(低くて不利なこと)とかあると思うんですけれど、シュート力だったり、試合を支配する力がすごくあると思うので、そういうところをしっかり生かして、恥ずかしがらないでやってほしいなと思います」
「すごい日本人のガードがいる」
筆者が河村と初めて会ったのは5年前、2019年夏のことだった。ロサンゼルスのバスケットボール関係者が興奮して連絡してきたのだ。
「すごい日本人のガードがいる。田臥(勇太)や富樫(勇樹)よりもずっと上手い。これまで見てきた日本人ポイントガードでは最高の選手だ。今すぐGリーグでもプレーできるかもしれない」
それが、当時福岡第一高校3年の河村だった。
福岡第一高校の井手口孝監督が、夏休みに河村と小川麻斗(現千葉ジェッツ)を連れて、ロサンゼルスを訪れていたのだ。アメリカ人コーチのもとでワークアウトをしたほか、タイミングよくアナハイムで開催されたFIBAワールドカップ前の強化試合、アメリカ代表対スペイン代表の試合を見たりして、アメリカでのバスケットボール経験を堪能していた。
その滞在中に河村と話す機会があった。
ハンバーガーを食べながらの雑談のなかで、小川がアメリカのバスケットボールへの興味を示していたのと対照的に、河村はアメリカにはまったく関心がないように見えた。「今すぐにGリーグでもやれる」という評価を聞いて、アメリカの大学への進学やNBA入りの夢をもつ選手なのかと思い込んでいたので、正直、肩透かしをくらった気分だった。