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「新記録より送りバント」を選んだワケは? “ドラフト注目”大商大・渡部聖弥が語る泥臭さの原点…右打ち、外野手、「せいや」なら指名の球団は…
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/10/22 06:01
ドラフトで注目の大商大・渡部聖弥(177cm88kg・右投右打)。明大の宗山塁とは高校時代のチームメイトだ
宗山塁が「プリンス」だとしたら、渡部聖弥は「野武士」かな……と振ったら、「間違いなく、そっちのタイプですね、自分は。そのほうが好きですし」と返してきた笑顔が、いかにもカブトが似合いそうなはっきりとした目鼻立ち。ユニフォームを内から圧するような分厚い体躯には、鉄の甲冑がピッタリ。「戦国武将」そのものの押し出しだ。
「自分のイメージとして、実戦の中のどんな場面でも、ベンチが要求するプレーを体現できること。それが、自分の理想とする<欠点のない選手>なんです」
語尾まではっきりと、思うところを明瞭に伝えてくれるから、問う側としては、こんなにありがたい選手もいない。
学生野球の練習の現場が、すごくなごやかな空気になったのは、ここ3、4年ほどだろうか。
必要な指摘でも、厳しい言葉や激しい口調で伝えてはいけないような雰囲気になって、誰が4年生で、誰が1年生なのか、ぜんぜんわからなくなった。ミスも笑いでやり過ごすような場面も見るようになったが、そんな中で以前とさほど変わらないメリハリの利いた緊張感に満ちているのが大阪商業大グラウンド。むしろ、すがすがしく感じる。
気を抜いたプレーや気遣いを欠いた動きには、富山陽一監督一流の関西系叱咤の爆声がグラウンドに響き渡る。
「奈良の山の中なんで、どこへも聞こえませんから」
こっそり教えてくれる茶目っ気に、渡部聖弥の「立体感」が伝わる。
「この緊張感の中で4年間野球ができたのは、自分にとって、ほんとに有難かった。日々、プレッシャーの中で練習していると、自分が強くなっていくのがわかりますし、ウチの選手たち、実戦になるとほんとに強いですよ」
厳しさに慣れていない選手には、それこそ厳しいのではないのか。ちょっと心配したら、
「いや、それはないですね。キツイこと言われてもその通りなんだし、不思議とあとに残らない。人情味のあるかたなんで、監督」