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「新記録より送りバント」を選んだワケは? “ドラフト注目”大商大・渡部聖弥が語る泥臭さの原点…右打ち、外野手、「せいや」なら指名の球団は…
posted2024/10/22 06:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
あの一弾には、今も驚いている。
昨年6月、全日本大学野球選手権。全国の春の大学野球リーグ戦の優勝チームが、神宮球場と東京ドームを決戦場にして全国一を争う「学生野球の甲子園大会」みたいなビッグイベントである。
その2回戦、花園大(京滋大学リーグ)との試合。
終盤8回、大阪商業大・渡部聖弥中堅手(当時3年・177cm88kg・右投右打・広陵高)が、東京ドームの右中間に叩き込んだ2ランには息を飲んだ。
相手の花園大・小林純大投手(当時2年・栗東高)だって、すでに150キロ台をマークしているリーグ屈指の快速右腕。その速球をホームベース上の最も力の入るポイントで捉えた打球は、右打席からドームの右中間中段近くへまっすぐに伸びていった。
この試合では三塁打も放ち、広角への長打力と高精度のバッティング技術をネット裏にしかと印象付けた渡部聖弥選手は、高校時代から定評のある広い守備範囲と強肩も併せて、プロの評価をワンランク……いや、ツーランク高めることに成功していた。
「欠点のない選手になりたいんです」
この秋、リーグ戦の真っただ中の大阪商業大グラウンドで、彼はまずそう言いきって話を始めた。
「打てて、守れて、走れて……も大事なんですけど、野球って、それ以外にもいろんな場面があるじゃないですか。場面、場面で、状況を見抜いて、勝ちに近づけるためにはここはどんなプレーが必要か。進塁打とか、ポジショニングとか、走塁の、行く、行かないの一瞬の判断とか」
目に力がある。いや、目に確かな「意志」がある。
名門・広陵高の僚友・宗山塁遊撃手(明治大)とは、また違った存在感。