オリンピックPRESSBACK NUMBER

紛糾した“誤審騒動”に「一本を取るしかない」…柔道81キロ級金・永瀬貴規(31歳)はなぜパリで圧勝できた?「会場は当日まで行きませんでした」 

text by

小松成美

小松成美Narumi Komatsu

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2024/10/20 11:00

紛糾した“誤審騒動”に「一本を取るしかない」…柔道81キロ級金・永瀬貴規(31歳)はなぜパリで圧勝できた?「会場は当日まで行きませんでした」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

パリ五輪柔道81キロ級で金メダルを獲得した永瀬貴規(31歳)。畳外の喧騒に翻弄されず、連覇を達成できた秘訣はどこにあったのか

 初戦となる2回戦の相手は世界ランク66位ウルグアイのアレイン・アプラミアン(36歳)。

「相手に寝技をかけられる場面もあったのですが、地力に差があり、慌てることはなかったです。内股から寝技に持ち込み、上四方固めで押さえ込んで、合わせ技1本で勝利しました。2分足らずの時間、想定通りの戦いでした」

 続く3回戦、トルコのベダト・アルバイラク(31歳)との試合では組手で主導権を握り寝技に持ち込んだ。相手の体力を奪うと、ゴールデンスコアで内股技あり。準々決勝へ駒を進める。

「アルバイラク選手とはこれまでも何回も対戦したことがあるので、二枚腰の選手であることは知っていました。延長までもつれてしまいましたが、チャンスは絶対来ると思っていました。だから絶対に引かなかった。思い切って技をかけていきました。その気持ちが途切れなかったから得られた勝利でした」

準々決勝は世界ランク1位と「8分超の激闘」

 準々決勝で対戦したのは、ベルギーのマティアス・カッセ(27歳)。東京オリンピックの銅メダリストで、対戦時は世界ランク1位の強豪だ。しかも3月に開催された「グランドスラム・タシケント2024」で対戦し、永瀬が敗北を喫した相手でもある。

「組み合わせが決まる前から、順調にいけば準々決勝で当たるというのはわかっていたので、日本にいる時からカッセ選手を意識していました。流れが悪くなると捨て身技をかけてくる選手なので、その戦術を分析し、石内に試合展開までリクエストし、稽古をしていたのです」

 延長2分40秒すぎ、永瀬は大外刈りで技ありを奪い、勝利を決めた。本戦、延長を合わせると8分近い激戦だった。

「今振り返ると、3月の敗戦がものすごく役に立っていました。負けたことで得ることの大きさを改めて噛み締めましたね。東京オリンピックのときも、2021年3月のグランドスラム・タシケントで敗れた選手と2戦目で当たったのですが、1年前の敗戦を克服してリベンジすることができた。準々決勝も、負けが活きた試合だったと思います」

 控え室で準決勝を待つ永瀬は、柔道における「強さ」について想いを巡らせていた。

「私は、勝ち続けてきた選手ではありません。何度も負けて、むしろ悔しさを噛み締めてきた選手です。パリで戦っている最中、はっきりとわかったんです。今ある自分の柔道は、負けた試合から目を背けず、その原因を打ち消す稽古を繰り返したからこそ、手に入れられたものなのだ、と」

<次回へつづく>

#2に続く
パリ五輪柔道“あの”疑惑のルーレットを金メダリスト・永瀬貴規(31歳)は現場でどう感じた?「フランスに流れがあったのは間違いない。でも…」

関連記事

BACK 1 2 3 4
#永瀬貴規
#筑波大学
#永山竜樹
#パリ五輪
#東京五輪
#オリンピック・パラリンピック

格闘技の前後の記事

ページトップ